最新記事

エネルギー

アメリカの太陽発電ブーム、「トランプ関税」で終焉迎える?

2017年7月31日(月)16時47分


救済措置を模索

ソーラーパネルをめぐる論争は、まさに、グローバル貿易が米製造業に打撃を与える一方で、消費者に膨大なコスト節約をもたらしてきた最も最近の例だ。

太陽電池技術を発明した米国は、ほんの2001年までは、世界全体のソーラーパネル生産量の4分の1以上を占めていた。だが、いまや生産量で世界1位を誇る中国に押され、現在はそのシェアは2%以下にまで低下してしまった。

中国企業が市場シェアを獲得するために自国政府からの補助金を受けて違法なダンピングを行っている、と競合会社は長らく訴えてきた。米国は2012年、中国企業に対して平均約40%の懲罰的関税を、また2014年には台湾系メーカー対象に平均約20%の関税を課している、とGTMリサーチは指摘する。

これらの関税は今でも有効だ。だが、4月に破産申請したサニバはそれ以上の対応を求めている。連邦破産法11条に基づく申請から2週間も経たないうちに、同社は米国際貿易委員会(ITC)に珍しい形式で救済を求める嘆願書を提出した。

そのなかでサニバは、中国・台湾企業が、関税適用を回避するために他の低賃金国に生産を移転したことにより、これまでの関税は機能していないと主張。

政府に対し、懲罰的関税の回避防止のため、米国外のどこで生産されたものであっても、ソーラーパネル価格を出力1ワット当たり最低78セントに定めるよう求めている。これは最近の価格高騰以前の平均水準だった35セントから大きく跳ね上がる。

皮肉なことに、2015年以来、サニバ株式の過半数は中国企業が保有している。5月には、ドイツの太陽光発電設備会社ソーラーワールドAGの米国事業部であるソーラーワールド・アメリカが、共同請願者としてサニバによる提訴に合流した。

サニバが求めているのは米国の製造企業に「成功の機会」を与えることだ、と同社代理人クリスチャン・ハドソン氏はロイターに述べた。

「米国を拠点とするソーラー製造企業が消滅してしまえば、製造が最終的には世界の1カ所に集中することになり、開発・設置事業者は最終的に大きな不安定性に直面する」と同氏はメールで回答した。

米ITCは、輸入品が国内生産者に損害を与えているかを、9月22日までに判断する。深刻な損害があると認定した場合、11月13日までに米大統領に救済策を勧告する。その勧告を実施するか、別の行動をとるかは、大統領の裁量に委ねられている。

トランプ大統領が何をやるかは誰にも予想できない。大統領はこれまで再生可能エネルギーに対して概ね否定的だったが、最近になって、彼が提案しているメキシコ国境の「壁」上にソーラーパネルを設置することを提案している。

トランプ大統領が何らかの行動を起こした場合、中国が報復措置を講じることはほぼ確実だ。2012年に課された米関税に対しては、太陽電池セルの原材料である米国産ポリシリコンに独自の関税をかけることで対抗した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国務長官、イスラエル首相と電話会談 イランやガザ

ワールド

米判事、議会襲撃巡る恩赦を批判 「修正主義的神話」

ワールド

米南部、記録的寒波と吹雪で少なくとも12人死亡 9

ワールド

パリ協定再離脱、米石油・ガス業界は反対 トランプ政
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 4
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 5
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    【クイズ】長すぎる英単語「Antidisestablishmentari…
  • 8
    トランプ就任で「USスチール買収」はどう動くか...「…
  • 9
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 10
    「後継者誕生?」バロン・トランプ氏、父の就任式で…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中