アメリカの太陽発電ブーム、「トランプ関税」で終焉迎える?
救済措置を模索
ソーラーパネルをめぐる論争は、まさに、グローバル貿易が米製造業に打撃を与える一方で、消費者に膨大なコスト節約をもたらしてきた最も最近の例だ。
太陽電池技術を発明した米国は、ほんの2001年までは、世界全体のソーラーパネル生産量の4分の1以上を占めていた。だが、いまや生産量で世界1位を誇る中国に押され、現在はそのシェアは2%以下にまで低下してしまった。
中国企業が市場シェアを獲得するために自国政府からの補助金を受けて違法なダンピングを行っている、と競合会社は長らく訴えてきた。米国は2012年、中国企業に対して平均約40%の懲罰的関税を、また2014年には台湾系メーカー対象に平均約20%の関税を課している、とGTMリサーチは指摘する。
これらの関税は今でも有効だ。だが、4月に破産申請したサニバはそれ以上の対応を求めている。連邦破産法11条に基づく申請から2週間も経たないうちに、同社は米国際貿易委員会(ITC)に珍しい形式で救済を求める嘆願書を提出した。
そのなかでサニバは、中国・台湾企業が、関税適用を回避するために他の低賃金国に生産を移転したことにより、これまでの関税は機能していないと主張。
政府に対し、懲罰的関税の回避防止のため、米国外のどこで生産されたものであっても、ソーラーパネル価格を出力1ワット当たり最低78セントに定めるよう求めている。これは最近の価格高騰以前の平均水準だった35セントから大きく跳ね上がる。
皮肉なことに、2015年以来、サニバ株式の過半数は中国企業が保有している。5月には、ドイツの太陽光発電設備会社ソーラーワールドAGの米国事業部であるソーラーワールド・アメリカが、共同請願者としてサニバによる提訴に合流した。
サニバが求めているのは米国の製造企業に「成功の機会」を与えることだ、と同社代理人クリスチャン・ハドソン氏はロイターに述べた。
「米国を拠点とするソーラー製造企業が消滅してしまえば、製造が最終的には世界の1カ所に集中することになり、開発・設置事業者は最終的に大きな不安定性に直面する」と同氏はメールで回答した。
米ITCは、輸入品が国内生産者に損害を与えているかを、9月22日までに判断する。深刻な損害があると認定した場合、11月13日までに米大統領に救済策を勧告する。その勧告を実施するか、別の行動をとるかは、大統領の裁量に委ねられている。
トランプ大統領が何をやるかは誰にも予想できない。大統領はこれまで再生可能エネルギーに対して概ね否定的だったが、最近になって、彼が提案しているメキシコ国境の「壁」上にソーラーパネルを設置することを提案している。
トランプ大統領が何らかの行動を起こした場合、中国が報復措置を講じることはほぼ確実だ。2012年に課された米関税に対しては、太陽電池セルの原材料である米国産ポリシリコンに独自の関税をかけることで対抗した。