最新記事

シリア

シリアのアサド大統領の長男、数学オリンピックで惨敗

2017年7月25日(火)17時20分
ベサニー・アレン・エブラヒミアン、カビサ・スラナ

国際数学オリンピックに参加したアサド大統領の長男ハフェズ FACEBOOK

<出場するだけでも箔がつく大会に、親の七光りで潜り込んだダメ息子?>

「僕は他のみんなと同じシリア国民だ」

先週ブラジル紙オ・グロボの取材でこう語ったのは、シリアのバシャル・アサド大統領の長男ハフェズ・アサド(15)だ。ハフェズは国際的に権威のある国際数学オリンピックのシリア代表選手として、ブラジルに滞在中だった。

シリア代表チームの成績は全体の56位で、韓国や中国、ベトナム、アメリカなどの上位国に遠く及ばなかった。

ハフェズの祖父は1971~2000年までシリア大統領を務め、ハフェズの父アサドはその後を継いだ。今の独裁体制が続けばハフェズはアサド家3人目の大統領だ。

オ・グロボによれば、アサド政権を支持する政府軍の指揮官たちは、ハファズの数学シリア代表入りは彼がアサド一族の立派な後継者である表れだとして、歓迎したという。
 
だがハフェズ個人の成績は、参加した615人中528位と散々なもので、シリア代表の中でも最下位だった。

国際数学オリンピックは参加するだけで履歴書に箔が付き、世界中の一流大学への入学許可をもらえる。そのため、一部の国のエリート層の間では、数学オリンピックはスポーツのオリンピックと同じくらい有名だ。

僕は普通の子ども

「僕はいつも普通の子どもと同じように暮らし、友だちも僕のことを普通の人だと思っている」とハフェズはオ・グロボに語った。「僕はみんなと同じ普通の人だ」

ハフェズが普通の子どものように暮らしていた間、父親のアサドは反政府勢力の支配地域で暮らす民衆に全面戦争を仕掛け、学校や病院を空襲の標的にした。200万人以上のシリアの子どもが避難を余儀なくされた。内戦の死者は40万人以上にのぼる。

【参考記事】世界が放置したアサドの無差別殺戮、拷問、レイプ

今年4月、アサド政権はシリア北西部の町カーン・シェイクンで化学兵器を使用した。国連は神経ガスのサリンが使われたとみている。

【参考記事】シリアの子供たちは、何度化学兵器で殺されるのか

「僕は自分の父親がどんなタイプの男か知っている」とハフェズは語り、父親を擁護した。「多くの人々が大統領をやみくもに批判するが、その内容は事実でない」

「こういう困難な時期こそ、僕らの世代が平和をもたらすことができる」

しかし今回のような成績では、親の七光りとしか思えない。

(翻訳:河原里香)


From Foreign Policy Magazine



【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!

ご登録(無料)はこちらから=>>


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪3月住宅価格は過去最高、4年ぶり利下げ受け=コア

ビジネス

アーム設計のデータセンター用CPU、年末にシェア5

ビジネス

米ブラックロックCEO、保護主義台頭に警鐘 「二極

ワールド

ガザの砂地から救助隊15人の遺体回収、国連がイスラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中