ブレグジットを撤回したくなってきたイギリス人。果たして可能?
メイは求心力を強めるどころか、ほぼすべての権威を失った。それでも首相の座に留まるのは、与党・保守党が後任争いで分裂しかねないのと、さらなる総選挙を何としても避けたいからだ。
政権内の対立は激しさを増すばかりだ。フィリップ・ハモンド財務相は、EUの27カ国と親密な関係を維持しようと企て、「ブレグジットを妨害」しようとしていると非難されている。
こうした衝突や混乱には3つの理由がある。
第1に、昨年の国民投票は、EU離脱という選択で将来のイギリスとEUの関係がどう変わるのかを一切示さなかった。
国民投票で残留か離脱かの議論は一旦収まったが、ハードブレグジットかソフトブレグジットか、ノルウェー型かスイス型か、という議論はそこから始まった。
第2に、残留派の一部が離脱派の勝利後すぐにも起きると予測した経済の崩壊は現実にならなかったものの、離脱の影響は少しずつ目に見え始めた。
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法律上はおそらく可能
英通貨ポンドは下落し、成長率は鈍り、投資は減速、物価も上昇し始めた。EUからの移民が大挙して本国に戻るにつれ、熟練労働者も不足する。
第3に、メイが総選挙で大敗を喫したことで、国民はもはやハードブレグジットを求めていないことがはっきりした。そこに、他の様々な離脱の選択肢が出てくる余地ができた。
しかし、多様な選択肢とそれに伴う困難を知れば知るほど、ブレグジットそのものへの疑問も強まっている。
保守党ほどではないが、最大野党の労働党も党内の意見が分裂している。ブレグジットに必要な膨大な数の法律を通過させるのは、途方もない悪夢になることが明白になってきた。
ブレグジットの撤回は、少なくともイギリスがEUを離脱する期限とされる2019年3月までなら、恐らく手続き上も法律的にも可能と思われる。
だが、現時点では撤回を訴える政治家はわずか数人。問題は、ブレグジットがもたらす試練が、離脱の期限までに世論を残留へと心変わりさせるのに十分な影響力を持つかどうかだ。
(翻訳:河原里香)