中国初の空母、香港寄港 武力誇示で「愛国心」育つか
7月7日、中国初の空母が歴史的な寄港を果たした香港は、これまでよりも頻繁に同国が軍事力を誇示する舞台になると予想されている。写真は戦闘機やヘリコプターを搭載した中国初の空母「遼寧」(2017年 ロイター/Bobby Yip)
中国初の空母が今月、歴史的な寄港を果たした香港は、これまでよりも頻繁に同国が軍事力を誇示する舞台になると予想されている。中国当局が、自由度の高いこの国際金融ハブにおいて、国家主義的ムードを高める新たな手法を探っているためだ。
かつて英国の植民地だった香港では、各地の兵舎に駐屯する人民解放軍部隊の存在感は今後も薄いままだろう。だが、現地の当局者や駐在外交官、アナリストによれば、中国の増大する軍事力がこの地で誇示され、軍が公的な関与をさらに強める可能性が高いと指摘する。
「今回の寄港は香港の同志たちの愛国心を目覚めさせ、国と香港に対する人々の愛着を深めることに貢献するだろう」。中国海軍のDing Yi海軍中将は、空母「遼寧」が、2艦の52型駆逐艦を伴って香港に入港した後、記者団にそう語った。
8000人規模の駐香港部隊は、市内の基地と、中国本土の境界を越えた広東省南部とに分かれて駐在している。ここ数カ月は、ヘリコプター演習を含め、実弾使用を伴う、より激しい演習を実施している。
「香港において最も軍事色が強い出来事が、米艦船や水兵の来訪だった時代は終りつつある。いまや香港は、人民解放軍の存在感増大を受け入れつつあるという感触だ」とある外交官は言う。
中国共産党の政治理論誌「求是」(「真実追求」の意)の最近の記事は、香港における戦闘能力と「教育を通じた主権の保護」を向上させる必要がある、とする人民解放軍高官の発言を伝えている。
中国政府寄りの姿勢で知られる香港紙「文匯報(ぶんわいほう)」は7日の社説で、地元の愛国的感情を高め、「人民の心の復帰を促す」ため、より多くの軍事活動が必要だと主張した。
「人民解放軍の姿勢が変化し始め、新たな役割へと向かっているようだ」と香港の嶺南大学で中国本土の安全保障を専門とするZhang Baohui氏は語る。「1つには、香港における国家意識を高めようと試みていることが分かる」
ロイターからの問い合わせに対し駐香港部隊からの回答は得られていない。
香港基本法の下では、外交と防衛に関しては中国政府が責任を負うことになっている。