最新記事

環境問題

中国の汚染廃水対策、世界の水処理企業が熱視線

2017年7月11日(火)12時57分

7月9日、悪名高いある場所で、世界中の水処理企業が好機をうかがっている。廃棄物が急増し、水質汚染が深刻化する中国だ。写真は、浙江省の流出した燃料に汚染された川。2015年4月撮影(2017年 ロイター)

悪名高いある場所で、世界中の水処理企業が好機をうかがっている。廃棄物が急増し、水質汚染が深刻化する中国だ。

世界で最も人口の多い中国では長い間、肥料の流出や重金属、未処理の汚水による汚染と闘ってきた。2015年の調査によると、同国では地下水の3分の2近く、そして地上水の3分の1が、人間が接触するのに適していない。

改善策として、中国は2020年までに12万6000キロに及ぶ下水管を新たに建設すると発表。これは優に地球3周分の長さだ。同国政府はさらに、都市部の下水処理能力を1日当たり5000万立法メートル増やすとしている。これは五輪プール2万個分に等しい。

このような中国政府の方針は、イスラエルのエメフシーや米化粧品大手エスティ・ローダーのロン・ローダー氏が設立したRWLウオーター、仏ヴェオリアといったような水処理関連企業に大きな門戸を開いている。各社とも、向こう5年間、推定3兆元(約50兆円)の年間環境予算が見込まれる中国市場におけるシェア獲得を狙っている。

「農業や地方から出る廃水問題は現在、とても深刻だが、廃水処理事業は依然として弱い」。国会に相当する全国人民代表大会で立法権を行使する常務委員会で副委員長を務めるTong Weidong氏はそう語る。

最近では、長江流域の湖北省にある世界最大の水力発電ダム、三峡ダムの貯水池に村民が汚水を捨てているとの報道があった。

だが、変化はすでに始まっている、とTong氏は語る。

新たな法律の下で、水質管理の直接の責任を負うことになる地元当局は今後、下水処理能力の改善を迫られる。都市部は2020年までに、2015年の92%から95%まで処理能力を向上させなくてはならない。一方、中部から西部の農村地域は50%に達する必要がある。

「市場は巨大だ」と、イスラエルの水処理企業エメフシーの中国法人で最高経営責任者を務めるWong-Jin Yong氏は語る。同社は北京と周辺各省における潜在的な市場機会について、10億ドル(約1141億円)を超えるとみている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ米政権、ハーバード大への助成・契約90億ド

ワールド

アルゼンチン貧困率、24年下半期は38.1%に急低

ワールド

豪中銀、政策金利据え置き 米関税の影響懸念

ワールド

イスラエル首相、「カタールゲート」巡る側近の汚職疑
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中