勢い欠く日本企業の省力化・IT投資 人材不足や法規制が足かせ
背景の1つに、事業拡大が人手不足によって難しくなっている点が指摘されている。BNPパリバ証券・白石洋氏は「設備投資に加速が見られないのは、日本経済が既に完全雇用に達しており、多くの業種において人手不足で業容の拡大が難しくなっていることが一因」とみている。
2つ目として、人口減少における日本の国内市場の縮小が、設備投資拡大に「二の足を踏ませる」影響もある。
ロイター6月企業調査でも、今後3年間で最も深刻な課題について、非製造業では「人手不足」との回答が45%を占めてトップとなったほか、「サービスを縮小せざるを得ない」との回答した企業も21%となった。
企業からは「単なる人手不足というよりも人材不足」によって、業容拡大やIT投資も思うように推進できない、といった声が漏れている。
また、「将来の人口減少を考えると、人手不足にどこまで対応が必要になるのか判断が難しい」(化学)といった声もある。
さらに非製造業では、自動化投資と言っても、製造業のように実用化が進んでいない現実もある。工事現場でロボットが登場するには、まだ相当時間がかかりそうであり、スーパーのレジを無人化するシステムの導入も、さまざまな実験は水面下で進んでいるもようだが、大規模に導入する計画を発表した企業はゼロだ。
こうした中で「一部運輸企業でのサービス縮小や、ファミリーレストランでの24時間営業の取りやめなど、大手企業でさえサービス提供を一部『あきらめ』ている。それだけに、中堅・中小ではそうした事例は山ほどあるとしてもおかしくない」とSMBC日興証券の宮前氏は分析する。
そのうえで「機械化投資のコストをかけても人口減少を見通せば、業務一部縮小により利益確保を図ることも考えられる。もう少し様子を見て、前年の反動なのか、業務縮小の動きなのか、判断したい」と述べている。