最新記事

米外交

トランプの訪欧に大逆風、前例のない抗議と不人気

2017年7月6日(木)14時14分
アンドリュー・ハモンド(英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス准教授)

調査機関ピュー・グローバル・リサーチが先週発表した調査結果によると、トランプの国際的なリーダーシップと政策に対して、国際世論の75%がほとんど、ないしはまったく信頼感を抱いていない。

多くの国々でトランプの支持率は2004年時点のブッシュ(息子)よりも低かった。予想どおりイスラエルとロシアではトランプの評価は高いが、この2国は例外的で、アジア太平洋諸国から南北アメリカ大陸まで、ほぼ世界中がトランプにノーを突きつけている。

【参考記事】トランプ、抗議デモ避けてイギリスに「密入国」?
【参考記事】トランプ「異例の招待」に英国民猛反発でエリザベス女王の戸惑い

先週のピュー・リサーチ・センターの調査結果が明らかにしたように、ブッシュ元大統領以降で初めて反米感情が多くの国で急増したことから、トランプは現代史で最も海外で不人気のアメリカ大統領になる可能性が出てきた。

それにより、バラク・オバマ前米大統領がアメリカのイメージを変えようとした8年にわたる努力のほとんどが無駄になるかもしれない。

オバマが2009年に大統領になって直面したのは、ベトナム戦争以来の最悪レベルにあった反米感情だ。その主な原因は、「テロとの戦い」と称したブッシュ政権の外交政策が、国際的に評判が悪かったからだ。

オバマが上げたアメリカのブランド価値

オバマ前政権は反米感情を逆転させるために様々な手を打った。ある研究によれば、オバマ前政権1年目だけで、「オバマ効果」はアメリカのブランド価値を2兆1000億ドルも押し上げた。ブッシュから政権を引き継いだ後、アメリカを世界で最も素晴らしい国とみなす外国人がかなりの割合が増加したことを示している。

国際社会でアメリカのイメージが改善したことを、米政府のみならず米企業も歓迎した。アメリカに本社を置く多国籍企業は、ブッシュ政権になってから海外ビジネスで反発を受けるなど、反米主義のはけ口になる懸念も生じていたからだ。

オバマは数々の成功を収めたが、成果は偏っていた。恐らくオバマの世界的なパブリック・ディプロマシー(大衆外交)における最大の失敗は、イスラム世界への対応だろう。

例えば、オバマは1期目にエジプトの首都カイロで有名な演説をし、イスラム教が多数派を占める国々との関係を修復すると約束したが、パキスタンやエジプトなどのイスラム同盟国でさえ、今も反米主義が根強く残っている。

それでもオバマ前政権末期に彼の国際問題に関する指導力を信頼すると回答した人の割合は、全世界で64%に上った。今のトランプをはるかに上回る数字だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中