アメリカに大邸宅ブーム再来、住宅バブルの兆候も
金融危機の前、マック・マンションが最も売れていた時期の中間価格は51万9500ドルだった。大不況の最中はそれが36万1574ドルまで下落した。それ以降、全般に住宅価格は上昇してきたが、マック・マンションの上昇率は他を上回る。
英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の経済パフォーマンスセンター(CEP)のクレメント・ベレ研究員が今年の春、マック・マンションの建設が増加すると周辺の住民は小さい自宅への不満を募らせる、とする論文を発表した。マック・マンションが増えるほど、周辺住民はもっと大きな家を建てたくなり、借金に走るのだという。
ベレは米国勢調査局が実施した1984~2009年のアメリカの住宅調査を分析し、住宅所有者は「近所に大型の家が建った後、相対的に自宅の価値が下がったように感じた」経験を持っていることを発見した。
低金利で拍車
アメリカ人は、金融危機が起きる直前まで大型の家を追い求めていた。「近所の人に負けじと見栄を張った」結果だったというのがベレの分析だ。「所得に占める住宅ローンの割合は、1945年の20%から2008年には90%まで上昇した」と、ベレは指摘する。住宅ローンの膨張とともにマック・マンションも巨大化し、それに負けないよう、さらに多くの人がマック・マンションを建てた。
「住宅所有者が見栄を張らなければ、所得に占める住宅ローンの割合は金融危機の直前より25%は低かったはずだ」とベレは言う。「マック・マンションが嫌がられるのは、周辺住民の持ち家に対する満足度を下げるからだ」と、ベレは本誌に語った。
マック・マンションが建って裕福な住民が引っ越してくることで、周辺施設や環境が改善し、地域の評判が上がることもある。だが全体としては、マック・マンションは住民の自宅に対する満足感を減退させ、より大きな家を建てる競争を煽っていた。
だからこそFRBは今、利上げで住宅価格の高騰にブレーキをかける必要があるのだとラプキーは言う。
だがFRBは、まだ大不況以来の逆風が残っており、利上げペースを上げることはできないと言っている。2017年の第一四半期のアメリカの経済成長率も1.2%止まりだった。
「住宅価格は高騰し、市場では新たなバブルが生まれている」とラプキーは言う。インフレは「FRBがもっと速いスピードで利上げを行うまで」止まらないと彼は見る。「今のような住宅価格の上昇に、自然な点は一つもない」
(翻訳:河原里香)
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