北朝鮮問題をめぐって、G20米中露日韓の温度差

2017年7月10日(月)00時08分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

4月26日付けのコラム「米が北を攻撃したときの中国の出方――環球時報を読み解く」に書いたように、4月22日付の「環球時報」は、「米軍による北朝鮮への限定的なピンポイント攻撃」は黙認するといった趣旨のことを書いていた。それがロシアと提携した途端、やや後退を見せたのは注目すべきだ。

日中首脳会談では

7月8日に日中首脳会談がG20開催中のハンブルグで行なわれた。韓国に対してさえ、一定程度の笑顔で接した習近平は、安倍首相には「笑ったら損」とばかりに、ニコリともしなかった。そして圧力強化を訴える安倍首相に対して、習近平は遠慮することなく「独自制裁に反対し、対話を重んじる」と主張。しかし少なくとも「朝鮮半島の非核化」に関しては一致した。

米中首脳会談では

日本時間の7月8日夜半に行なわれた米中首脳会談では、トランプ氏が北朝鮮に対する影響力を十分に行使していないという中国への不満を述べ、習近平は対話による解決を重視すべきとした模様だ。雰囲気はにこやかで、第一回目(4月6日、7日)の首脳会談により、「両国は素晴らしい関係を築けた」と互いを礼賛し合っている。

中国政府の通信社「新華社」によれば、習近平は「複雑な世界において、強力な中米関係こそが、安定に資する」と述べたとのことなので、日米両国の、というより「習近平とトランプ」の「個人的蜜月」は、まだ続いているとみていいだろう。

それでいながら習近平はプーチンとは組む。ここが肝心だ。

トランプもプーチンと、もっと「親密」にしたいが、何しろ国内にロシアゲート疑惑を抱えているので、「それとなく」という程度にしか近づけない。ただ、会談に入る前にふと接触した時の二人の顔には、隠しきれない喜びが現れていたと、筆者には映った。

中国の本音と着地点

まず明確に言えるのは、中国は北朝鮮が核保有国になることには絶対に反対だということだ。それを表明するために、習近平政権になってから中朝首脳会談を行っていない。中国からすれば、これほど大きな懲罰はないと言っても過言ではない。

なぜ反対かというと、もし北朝鮮が核を保有すれば、韓国が持ちたがる。そうすれば必ず日本も核を保有するようになるだろうと中国は警戒している。キッシンジャー元米国務長官は「日本は核を持とうと思えば、いつでも持てる」と、1971年以来、中国の指導者に注意を促し続けてきた。中国が最も嫌がるのは、日本が核を持つことだ。

そうでなくとも、北朝鮮自身が軍事大国になることは中国にとっては実に危険なことだと中国は思っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾総統府、中国との有事想定した初の机上演習

ワールド

イスラエル右派閣僚がアルアクサモスク訪問、ガザ人質

ワールド

BYDの外注先、ブラジルの「奴隷労働」否定

ワールド

ウクライナ和平合意、ロシアの安全保障が不可欠=ラブ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 2
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3個分の軍艦島での「荒くれた心身を癒す」スナックに遊郭も
  • 3
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシアの都市カザンを自爆攻撃
  • 4
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 5
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命を…
  • 6
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 7
    「とても残念」な日本...クリスマスツリーに「星」を…
  • 8
    韓国Z世代の人気ラッパー、イ・ヨンジが語った「Small …
  • 9
    日本企業の国内軽視が招いた1人当たりGDPの凋落
  • 10
    ウクライナ特殊作戦による「ロシア軍幹部の暗殺」に…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 7
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 8
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 9
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 8
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 9
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 10
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中