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「投資は科学」とは対極の投資哲学を掲げる資産運用会社

2017年6月29日(木)16時15分
WORKSIGHT

経営は社会性と事業性のバランスが問われる

では、「いい会社」とはどういうものか。例えば、Bコーポレーション* のような評価基準がありますが、そういうものから窺えるのは最低限のベースラインはクリアしているということだけ。社会的責任投資とか環境対策といった施策のベースを高めるには有効だと思いますが、そうした要素を満たしているからといって、いい会社であるとは言い切れないと思います。

指標的評価でふるいにかけると、金太郎あめのような特徴のない会社しか残りません。数値をクリアするためにテクニックとして施策を実行しているだけかもしれませんしね。だから基本的には現場に行って、雰囲気や社風、企業文化を肌で感じないといけません。

結局のところ、私たちが観ているのは会社の個性なんです。個性や特徴のある会社は価格競争に巻き込まれることもなく、独自の強みを発揮して企業価値を向上させることができます。人を観るときと一緒ですよね。人として優等生の人は確かに立派だけれども、どこか味気なかったりする。付き合いたいと思うのは面白くて、ユニークな人ではないでしょうか。それと同じものを僕らは投資先の企業に求めているんです。

一方で、社会性の高い事業をしていて、従業員のモチベーションも高く、現場の人が活き活きと働いている企業でも、例えば財務面がぜい弱で持続可能性が低い場合は投資を見送ることもあります。

経営はバランス感覚が重要。社会性と事業性の両輪が回るよう、バランスをしっかりとっていないといけません。私たちは運用のプロとして、資金を「結い2101」に投資してくださるお客様の期待に応える責任があるので、その両輪をしっかりチェックしたうえで投資するのです。

「いい会社」になろうという努力をし続けているか

私たちが重視するのは、投資先企業との対話です。例えば、いい会社だと判断して投資させていただくことになっても、経営者の交代や組織体制の変化などで対話ができなくなったら株を売却するしかありません。それはつまり、その会社が私たちとの付き合いを望まなくなったということですから。

もちろん、いい会社でも事故は起きます。完璧な会社なんてないし、前例のないことにチャレンジして失敗することだってあるでしょう。要は何か起こったときの対応の問題なんですよ。いい会社になろうという行為をし続けることができているかという姿勢を鎌倉投信は問うているんです。

その姿勢を創るのは、経営者という意見もあるかもしれませんが、私たちはもっと深いところにある企業文化だと思います。経営者が代わっても社内の雰囲気や考え方、教育方針が変わらないことはよくあります。そういう社風が企業の背骨を形作るのだと思います。

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オフィスは築90年の古民家をリノベーションした。750坪の敷地のうち500坪を占める山林に囲まれ、緑豊かな環境で気持ちよく仕事ができるうえ、古都・鎌倉の風雅なイメージは会社のブランディングにも一役買っているという。「地の利を得ています」と新井氏。

多様性を丸ごと許容できる組織は強い。現場の判断力で社会に価値を提供できる


例えば、宅配便事業を手掛けるヤマト運輸は「結い2101」の投資先の1つですが、ここはまさに「いい会社」なんです。

東日本大震災のとき、被災地では営業所の多くが壊滅状態になりましたが、現場のセールスドライバーは自主的な判断で救援物資の輸送を無償でおこないました。本来なら業務命令違反となる行為ですが、後にこれを知った本社は叱責するどころか、本業で社会貢献するのは企業の責務であるということで、むしろ現場を支援したそうです。

企業の規模が大きくなればなるほど、経営者は自分の目が届かないところでブランドイメージが低下するようなことが起こらないようにコントロールしたがります。ルールを決めて、それを徹底的に順守させるんですね。そうすると現場の人たちは思考停止に陥り、現場力はどんどん低下します。

でも現場を大事にするなら自由にさせないといけません。結果として悪いことも時には起こるかもしれません。でもいいことと悪いことの表裏一体をセットで許容できる組織こそ強みを発揮できるし、現場に判断力が備わって社会に価値を提供できるんです。

そういう社風がヤマトの企業としての価値** を作っているし、それができる会社だから私たちも投資するわけです。あなたの仕事はこうです、あなたの役割はこうですと決められている人たちがブレークスルーするわけがないし、したがってイノベーションも起こせない。イノベーションの本質はそこにあると思います。

【参考記事】日本の地域再生を促すシビックプライドとは何か

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