習近平、香港訪問――なぜ直前に劉暁波を仮釈放したのか?
それでも「最善を尽くした」と当局は言うだろうが、誰もそのようなことを信じはしない。中国大陸以外の中文ネットに発表された劉暁波仮釈放に関するニュースには、多くの抗議コメントが、すでに書き込まれている。北朝鮮に釈放されたアメリカ人学生と類似の運命をたどれば、民衆の怒りは尋常ではないだろう。
習近平はおびえている
習近平はおびえているのだ。いつか中国人民が中国共産党の歴史の真相を知ることによって一党支配体制が崩壊するのを怖がっている(真相の詳細は『毛沢東 日本軍と共謀した男』に)。だから中国が民主化するのが怖い。民主化すれば情報は必ずいつかは開示される。旧ソ連はゴルバチョフの情報開示によって崩壊した。第二のゴルバチョフになることだけは避けたいと、習近平は思っている。だから言論を弾圧し、真実が見えないようにしている。
どんなに一帯一路やAIIBなどでグローバル経済のトップリーダーになったつもりでも、そうはいかない。虚偽の上に誕生した国家を、人民は最後まで見逃すということはない。
民主化運動を刺激しないようにするために、慌てて劉暁波を仮釈放などしても、もう遅い。人民は、そして香港の若者も、きちんと見ている。
習近平は香港で、どのような景色を見ることになるだろうか。
砂上の楼閣は、嘘で塗り固めようとして朽ちる。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。