最新記事

香港

習近平、香港訪問――なぜ直前に劉暁波を仮釈放したのか?

2017年6月27日(火)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

2013年3月に習近平が国家主席となってからは、「七不講(チーブージャーン)」(七つの話してはならないこと)を発布して、「中国共産党の歴史的間違いを指摘してはならない」ということまで宣言し、言論弾圧を強化してきた。

香港では、根っからの親中の新しい行政長官・林鄭月娥(りんてい げつが、キャリー・ラム)が7月1日に就任することになっている。彼女は2011年に失敗した愛国主義教育を再導入しようと、「私は中国人」という教育を小学校から始めるべきだと主張している。

このような状況の中、2014年に雨傘デモを主導した若者の代表者が6月15日に日本記者クラブで民主化運動を訴えた。彼らは習近平の香港訪問に合わせて10万人の抗議デモを行うと言っていたが、果たしてそれだけ集められるか、危うい状況にあった。
ところが、事態は一変した。

ノーベル平和賞受賞者・劉暁波の仮釈放――なぜ今か

6月26日、中国政府は習近平香港訪問を目前にして、劉暁波を仮釈放したのだ。すでに肝臓癌の末期にあるという。毎月健康診断をして、劉暁波の健康状態は非常にいいなどと説明していた当局は、5月に検査したら末期だったというのだ。

そんなことなどあり得ないことは、誰でも知っている。

毎月とまでは言わないにせよ、検査して知っていても、いよいよ末期となったので仮釈放という形で病院に運んだとしか思えない。運ばれた病院は遼寧省瀋陽にある中国医科大学。

劉暁波は民主的立憲政治を求める「零八憲章」を起草して拘束逮捕され、11年間の懲役刑を受けて遼寧省にある錦秋監獄で服役していた。2010年にノーベル平和賞を受賞したが、中国は劉暁波を授賞式に参加させず、投獄したままにしている。

もし彼が獄死したとなれば、中国共産党一党支配体制への不満が、中国の国内外において爆発するだろう。

だから、慌てて仮釈放して「獄外入院」を許した。

しかし、末期だという。万一にも近い将来に不幸な状況になったら、やはり不満は爆発するだろう。それが今年秋(おそらく11月)に開催されるとされる第19回党大会前だったら、どうなるか、十分に想像がつくはずだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国人民銀、一部銀行の債券投資調査 利益やリスクに

ワールド

香港大規模火災、死者159人・不明31人 修繕住宅

ビジネス

ECB、イタリアに金準備巡る予算修正案の再考を要請

ビジネス

トルコCPI、11月は前年比+31.07% 予想下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 4
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 5
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 6
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    トランプ王国テネシーに異変!? 下院補選で共和党が…
  • 9
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 10
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中