習近平、香港訪問――なぜ直前に劉暁波を仮釈放したのか?
2013年3月に習近平が国家主席となってからは、「七不講(チーブージャーン)」(七つの話してはならないこと)を発布して、「中国共産党の歴史的間違いを指摘してはならない」ということまで宣言し、言論弾圧を強化してきた。
香港では、根っからの親中の新しい行政長官・林鄭月娥(りんてい げつが、キャリー・ラム)が7月1日に就任することになっている。彼女は2011年に失敗した愛国主義教育を再導入しようと、「私は中国人」という教育を小学校から始めるべきだと主張している。
このような状況の中、2014年に雨傘デモを主導した若者の代表者が6月15日に日本記者クラブで民主化運動を訴えた。彼らは習近平の香港訪問に合わせて10万人の抗議デモを行うと言っていたが、果たしてそれだけ集められるか、危うい状況にあった。
ところが、事態は一変した。
ノーベル平和賞受賞者・劉暁波の仮釈放――なぜ今か
6月26日、中国政府は習近平香港訪問を目前にして、劉暁波を仮釈放したのだ。すでに肝臓癌の末期にあるという。毎月健康診断をして、劉暁波の健康状態は非常にいいなどと説明していた当局は、5月に検査したら末期だったというのだ。
そんなことなどあり得ないことは、誰でも知っている。
毎月とまでは言わないにせよ、検査して知っていても、いよいよ末期となったので仮釈放という形で病院に運んだとしか思えない。運ばれた病院は遼寧省瀋陽にある中国医科大学。
劉暁波は民主的立憲政治を求める「零八憲章」を起草して拘束逮捕され、11年間の懲役刑を受けて遼寧省にある錦秋監獄で服役していた。2010年にノーベル平和賞を受賞したが、中国は劉暁波を授賞式に参加させず、投獄したままにしている。
もし彼が獄死したとなれば、中国共産党一党支配体制への不満が、中国の国内外において爆発するだろう。
だから、慌てて仮釈放して「獄外入院」を許した。
しかし、末期だという。万一にも近い将来に不幸な状況になったら、やはり不満は爆発するだろう。それが今年秋(おそらく11月)に開催されるとされる第19回党大会前だったら、どうなるか、十分に想像がつくはずだ。