虐待児童を受け入れる一時保護所 ケアより規律でトラウマ生む例も
一時保護所は、都道府県や政令指定都市などに設置された児童相談所が管理しており、これまで国の監督はほとんど受けていなかった。運営資金は、国と地方自治体の予算から出ている。
子どもに優しいイメージがある日本だが、社会的養護の下にいる子どもの権利擁護については、他の先進国に遅れを取っている。根本的な問題の一つは里親が不足していることで、これにより施設で集団生活を送る子どもの割合は他の先進国と比べて多くなっている。
制度上の問題を認識した政府は昨年、児童福祉法の理念を改正し、子どもが権利の主体であることを初めて明記した。だが、児童福祉の現場での実践は未だ不十分だと専門家は指摘する。
2015年まで約20年間、都内の児童相談所で児童心理司を勤めた山脇由貴子氏は、こうした一時保護所について、「本当はケアをするための場所でならなくてはいけない」と断言する。
一時保護所の現状について、「地域差はあるが、とにかく食べて寝られていればいい、虐待されなければいい、というような場所として設置されてしまっている。職員も心のケアをまったく配慮できていない」と同氏は指摘する。
現場の職員は、子どもたちは非行や虐待といった様々な理由で保護されており、ニーズも多様なため、厳しい規律が必要だと主張する。厳格な管理がなければ、混乱が起きるという。
都内のある一時保護所を監督する吉川千賀子氏は、「集団生活なので色々な約束事がある」と説明。「子どもの数に対して職員数も限られている。一人ひとりに目が行き届かず、事故につながるということがないよう、一定程度、管理的になってしまう部分も、否定できない」
自傷行為には罰も
一時保護所での平均入所期間は30日だが、自宅に戻ったり、里親の元に送られたり、児童養護施設などに移されるまで、数カ月を過ごす子どもたちも多い。
ロイターは、関東地方に33カ所ある一時保護所の1つへの取材を許された。他の施設への取材は、プライバシーやセキュリティを理由に認められなかった。神奈川県横須賀市にある一時保護所を最近取材したが、これだけで生活環境についての結論を得ることは難しかった。