最新記事

中国

中国シェア自転車「悪名高きマナー問題」が消えた理由

2017年6月26日(月)11時45分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

実際にいくつかの中国の都市を見てみると印象が変わった。悪名高き中国人のマナー問題はどこへいってしまったのだろう!? 撮影:筆者

<中国発シェアリングエコノミーは世界から注目を浴び、いよいよ日本にもシェアサイクル大手が進出。中国内外のメディアでマナー問題がボトルネックといわれてきたが、筆者が中国で目にした現実とは>

6月22日、中国のシェアサイクル大手「モバイク(摩拜単車)」が日本法人設立を発表した。早ければ7月にも福岡市で試験的なサービスを始める見通しだ。

今やシェアサイクルを始めとする「中国発シェアリングエコノミー」は世界から熱視線を集めている。6月1日には、「ネット界の女王」と呼ばれるメアリー・ミーカー氏(ベンチャーキャピタル「KPCB」パートナー)のリポート『インターネット・トレンド』の2017年版が公開されたが、中国IT企業の成長ジャンルとしてシェアリングエコノミーが挙げられていた。

シェアリングエコノミーとはもともと、Airbnbに代表される民泊、Uberに代表されるシェアライドなど、一般市民が持つ家や自動車(そして自分の労働力)を提供して代価を受け取るというサービスだった。

ところが、中国発シェアリングエコノミーはやや様相を違えている。シェアサイクル、シェア・モバイルバッテリー、シェア雨傘、シェア・バスケットボールなど、さまざまなサービスが登場しているが、いずれもプロの事業者が一般ユーザーにサービスや製品をレンタルするという形式だ。

日本のシェアサイクルと違って乗り捨て自由

なかでも台風の目となっているのがシェアサイクルだ。日本法人を設立したモバイクとライバルの「ofo(共享単車)」という2強を筆頭に計30社近い企業が乱立し、激しい競争を繰り返している。

各社累計で2016年には200万台以上の自転車が投入されたが、2017年の投入台数は3000万台に達するとも予測されている。また、モバイクは先日6億ドルを超える融資を獲得したが、その多くは自転車の製造費用にあてられるとみられている。

【参考記事】中国の自転車シェアリング大手、世界へ拡大 7月には日本にも

なぜ中国発シェアサイクルはこれほどまでに注目を集めているのか。

日本にもある従来型のサービスは規定の駐輪場で自転車を借り、やはり規定の駐輪場で返すという仕組みだが、中国発のシェアサイクルでは街のどこでも乗り捨て自由。使いたい場合には、街のあちこちに放置されている自転車を探してスマートフォンで解錠。行きたい場所まで乗っていってそこに乗り捨てるという仕組みになっている。専用駐輪場まで行かなくて済むことで利便性が一気に高まったのだ。

私も実際に利用してみたが、なるほど、革命的なサービスだとうならされた。これまでは距離にして1キロ程度、徒歩10分を超えるような距離の移動には尻込みしていたが、シェアサイクルがあれば地下鉄駅から2~3キロ離れた場所への移動も苦にならない。値段も30分0.5元(約8円)程度と激安だ。

街を走っていると、学校帰りの中学生が下校のために利用している姿を見受けるなど、生活に溶け込んでいるさまがよくわかった。

takaguchi170626-1.jpg

中学生もシェアサイクルを利用していた 撮影:筆者

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

海外勢の米国債保有、2月は増加 日本・中国が拡大

ビジネス

トランプ氏、対日関税交渉で「大きな進展」 代表団と

ワールド

ウクライナ、米との鉱物協定協議で大きな進展 覚書署

ビジネス

トランプ関税で低所得層が新車買えない事態に、日産北
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 6
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 7
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 10
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 6
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 10
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中