コミー証言、トランプ大統領の司法妨害を立証できるか?
憲法は、大統領の弾劾について「反逆、収賄、その他の重大犯罪や不適切行為」と明示的に規定している。議会は、司法妨害が重大犯罪や不適切行為に含まれるかどうかを自由に判断することができる。ウォーターゲート事件で、当時のニクソン大統領に対して議会が用意した弾劾の理由の一つも司法妨害だった。ニクソン氏は、弾劾を受ける前の1974年に辞任した。
スタンフォード大法科大学院のデビッド・スランスキー教授は、議会は独自に何が司法妨害にあたるか定義することができるものの、連邦刑法を参考にするだろうと予測する。
ただ、弾劾は政治的なプロセスであり、トランプ氏が所属する共和党が議会の上下両院で過半数を占める現状では、現段階では実現可能性は低いとみらている。
弾劾の手続きは、下院から始まる。刑事裁判で有罪かどうかを陪審員が決める手続きと同様に、弾劾手続きを開始するかどうかについて、下院が投票を行う。下院議員の過半数が賛成すれば弾劾裁判が開始され、下院議員が検察官役、上院議員が陪審員役を務める形で、上院で審理が行われる。上院の3分の2の賛成で有罪が決議されば、大統領は罷免される。
米国で過去に弾劾裁判に持ち込まれた大統領は、1868年のアンドリュー・ジョンソン大統領と、1998年のビル・クリントン大統領の2人のみ。両大統領とも上院が有罪と認めなかった。
民主党のアル・グリーン、ブラッド・シャーマン両下院議員は今週、トランプ大統領に対する「弾劾状」と呼ばれる書類の草案作成に着手したことを明らかにした。だが下院では、こうした動きを後押しする機運は高まっておらず、身内の民主党議員からも時期尚早との声が聞かれる。
●コミー証言は、司法妨害容疑を補強するか
コミー前長官は、2月14日に面会した際にトランプ大統領から、フリン氏は「良いやつ」であり、同氏に対する捜査の中断に向けて「見極め」をつけるよう「希望する」と言われたと証言した。コミー氏は、大統領の発言は「指示」だと理解したと述べた。
一部の法律専門家は、この発言が妨害行為にあたると解釈できると指摘。トランプ大統領に捜査妨害の意図があったことは、ジャレッド・クシュナー大統領上級顧問やコミー氏の直属の上司であるセッションズ司法長官を退席させたうえで、コミー氏に語りかけたことから推測できるという分析だ。
「他の人を部屋から出したということは、自分の行動に後ろめたい部分があることを大統領が認識していたことを示唆する」と、ライト氏は話す。