最新記事

イスラム過激派

アジアに迫るISISの魔手 フィリピン・ミンダナオ島の衝撃

2017年6月17日(土)10時38分

軍によれば、戦闘によって20人の民間人が犠牲となった。いずれも戦闘員に拘束されていた人々だという。また、武装勢力の死者は120人、治安部隊の死者は38人に上り、そのうち10人の兵士は友軍の誤爆による死亡だったという。

「殺されると予想」

隣国インドネシアの当局者は、フィリピンが短期間でマラウィの奪還に成功したとしても、依然として大きな脅威にさらされるだろうと憂慮する。

「武装勢力がこちらに来るのではないかと心配している」とインドネシアのテロ対策当局者は語り、ミンダナオ島がインドネシアのスラウェシ島からさほど離れていない点を指摘する。

マラウィ中心部にはまだ2000人以上の住民が取り残されており、電気も使えず、食料や水も乏しい状況だ。住民によれば、軍と武装勢力が交わす銃撃で身動きの取れない者もいれば、脱出を試みたとしても武装勢力に阻止されるのではないかと恐れている者もいるという。

頭部を撃たれた8人の労働者の遺体が先月28日、マラウィ市外の渓谷で発見された。警察によれば、市内から脱出しようとして武装勢力に阻止された人々だという。

軍によれば、マラウィ奪還には、さらに民間人の犠牲者が出る可能性が高いという。

「人々は飢え、傷つき、殺されるだろうと予想している」と軍広報官のヘレラ中佐は言う。「この種の作戦では、巻き添え被害を100%防ぐことは不可能だ」

(翻訳:エァクレーレン)

Tom Allard

[マラウィ市(フィリピン) 3日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

カナダ世論調査、自由党の支持率が保守党を逆転=イプ

ビジネス

伊藤忠、セブン&アイ買収提案に関する検討を終了

ビジネス

セブン&アイ、MBO検討対象から外れる 創業家が資

ビジネス

日産、内田社長の交代に向け調整=ブルームバーグ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:破壊王マスク
特集:破壊王マスク
2025年3月 4日号(2/26発売)

「政府効率化省」トップとして米政府機関に大ナタ。イーロン・マスクは救世主か、破壊神か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほうがいい」と断言する金融商品
  • 3
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教育機会の格差
  • 4
    日本の大学「中国人急増」の、日本人が知らない深刻…
  • 5
    【クイズ】アメリカで2番目に「人口が多い」都市はど…
  • 6
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 7
    谷間が丸出し...際どいピンク下着で床を這う「無加工…
  • 8
    「縛られて刃物で...」斬首されたキリスト教徒70人の…
  • 9
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映…
  • 7
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中