ISIS戦闘員を虐殺する「死の天使」
アズラエルとカタイブの民兵たちは動画のなかで、今はイラクの要衝モスル西部のシンジャール山近郊にいると言った。モスルといえばかつてのISISの最大拠点だが、今はイラク軍とクルド人部隊、米軍主導の有志連合が奪還する寸前だ。アズラエルたちは、ラマダン(断食月)の終わり(今年は6月25日頃)をシリアで迎えると誓い、ISISを追って今後自分たちがシリア国境を越える用意があることを示唆した。
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もっとも、歓迎されるとは限らない。国境をはさんでカタイブ・アル・イマーム・アリと目と鼻の先に陣取っているのは、米軍の空爆支援を受けるシリア民主軍(SDF)だ。クルド人を主体に、反体制派のアラブ人部隊やISISと闘う少数民族などから成るSDFは今、ISISが首都と称するシリア北部のラッカに猛攻撃を仕掛けている。その米軍とSDFが、シリアのアサド政府軍とこれを支援するイランを強く警戒している。PMFの部隊も、イランで訓練を受けているため信用されないのだ。
SDFのタラル・シロ報道官は先月、イラン政府が後ろ盾のPMFがシリア領土に入ることは許さない、と言った。「もし侵入しようとすれば、応戦する」と、クルド語放送のニュース局「クルディスタン24」に語った。
イラク奪還に中心的役割
だがここ数日、PMFがすでに国境を越えてシリア領内に入り、戦闘に備えて塹壕を掘り始めたという報道がある。PMFがシリアとの国境沿いで、ISIS掃討のためにシリア政府軍と同盟を組んだ可能性はある。だがPMFのアーメド・アル・アサディ報道官は、噂を否定した。クルディスタン24によれば、アサディは「イラク正規軍はイラク領土の外で活動しない」と言った。
PMFは過去3年間で、一時イラク国土の45%を支配したISISから領土を取り戻すのに中心的な役割を果たした。スンニ派の超保守派主体のISISは、支配下に置く住民の集団処刑や投獄を行い、残忍な圧政を敷いた。そこへ10万人以上のシーア派民兵が奮起して、重要都市でISIS一掃を掲げて戦った結果、ISISの影響力が及ぶのはモスルとわずかな地域を残すのみになった。アズラエルもそんなシーア派民兵の1人だ。5人の子を持つ父親でもあるアズラエルは、銃弾だけでなく斧や剣を使ってISIS戦闘員を惨殺し、戦いを通り越した残忍さで注目を浴びた。