独メルケル首相、G7での同盟関係巡る「率直発言」の背景
盟友登場
複数のドイツ政府高官によると、マクロン氏がフランス大統領選に勝利する前の段階であれば、メルケル氏はあのような発言はしなかったとみられる。
親欧州で国際協調重視という同じ考えを持つマクロン氏の登場で、メルケル氏は国防や治安対策、移民、ユーロ圏改革といった問題に取り組んでいく上で、信頼できるパートナーを得ることができた。ドイツ政府高官の話では、G7サミットでも独仏首脳の関係は非常に良かったという。
メルケル氏は、マクロン氏が打ち出しているいくつかのユーロ圏改革構想について懐疑的なCDU内の保守派に対しても、妥協に備えるべきだと訴え掛けている。あるドイツ政府高官は「メルケル氏は、トランプ政権が出現した機会を利用して、より親欧州的な政策を形成しつつある」と話した。
トランプ氏への不満
もとよりメルケル氏のミュンヘンにおける発言は、トランプ氏への不満が募ったことで生まれた。複数の当局者によると、今回のトランプ氏の欧州初訪問はドイツ側を困惑させる結果になった。
発端は、トランプ氏がブリュッセルにおけるEU高官との非公式会談で、ドイツの対米貿易黒字問題を蒸し返して批判したことだった。さらにトランプ氏が、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で同盟国に応分の国防支出負担を繰り返し求め、集団安全保障条項への支持を明確に示さなかったことで、ドイツのいら立ちが一段と増大した。
さらにG7サミットでは、温暖化対策や移民問題で米国と他の6カ国の意見が対立した。メルケル氏は温暖化対策を巡る米国との議論に「とても不満」と振り返った。
トランプ氏は今週、温暖化対策の新たな枠組みである「パリ協定」に残留するか離脱するか決めるとしている。複数の当局者は、メルケル氏のミュンヘンにおける発言によって、トランプ氏に自らの決定がドイツや同盟国との関係に重大な影響を及ぼすのだと思い起こしてくれるのではないか、と期待している。
(Noah Barkin記者)