最新記事

ヒット商品

ハンドスピナー大流行に教師は困惑 ADHDへの効果も実証されていない

2017年5月17日(水)19時15分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

jacksfilms/YouTube

<ADHDに効くというハンドスピナーの宣伝は科学的根拠はなし。持ち込み禁止に踏み切る学校もある話題のグッズ>

アメリカでブームに火が付き、社会現象にまで発展している「ハンドスピナー」。三角形の手のひらサイズで、用途はベアリングを「ひたすら回す」こと。アメリカの中学校では、くるくると回し続ける生徒が続出し、授業を妨げるとして問題視されている。

ハンドスピナーはそもそも、科学エンジニアのキャサリン・ヘディンガーによって90年代初めに発明されたが、爆発的にヒットしたのは最近になってから。昨年12月にフォーブス誌で「オフィスで使えるおもちゃ」として紹介されたのをきっかけに、米ソーシャルニュース掲示板のredditや、YouTubeで情報が広がった。宣伝文句にADHD(注意欠陥多動性障害)への効果をうたうプロモーションが多く、ADHDの子供を持つ親の関心を引き付けた。

【参考記事】その診断、信じていいの?

ADHDに効果ありは疑問

アメリカでは600万人以上の子供がADHDと診断されている。最近になってブームが飛び火した日本でも、アマゾンでハンドスピナーを検索するとADHDの症状を和らげる効果を強調するような商品説明が目につく。このほか、不安、自閉症にも効き目があるというので、症状で苦しむ人にとっては魅力的に見えるが、本当に効果があるのかといえば疑問だ。

デューク大学で臨床心理学を教えるスコット・コリンズ教授は「ADHDを患う人向けに販売されている他のゲームや製品がたくさんあるように、基本的には(ハンドスピナーの効果について)科学的証拠はない」と、米公共放送ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)でコメントしている。

さらにカリフォルニア大学デービス校神経発達障害研究所のジュリー・シュワイツァーも、ADHDの症状に効くという証拠はないとしている。地元紙の取材に、「確実に効果がないと言いきる訳ではないが、裏付けはない」と話し、「明らかなのは、気を散らすこと」と宣伝とは逆の効果がもたらされる可能性を示唆した。

【参考記事】話題作『Mommy/マミー』が映す愛と絶望と希望

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU加盟国、トランプ次期米政権が新関税発動なら協調

ビジネス

経済対策、事業規模39兆円程度 補正予算の一般会計

ワールド

メキシコ大統領、強制送還移民受け入れの用意 トラン

ビジネス

Temuの中国PDD、第3四半期は売上高と利益が予
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中