豪華なドーナツ型新社屋はアップルの「墓標」になる?
アップルは4強に追いつけるか
ではアップルはどうだろう。確かに、同社のハードウエアは人気が高く、「iPhone」や「MacBook」「iPad」といった製品は今後も売れ続けるだろう。とはいえ、アップルの強力な製品群も、最近はいささかマンネリ化が目立つ。以前なら、iPhoneの新機種が登場すると鳥肌が立つような興奮を覚えた。だが今、この秋に「iPhone 8」の発表を控えても、期待はこれまでの延長の範囲を出ない。
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さらに問題なのは、これまでに挙げた4強と比べると、アップルがデータ収集で遅れているとみられる点だ。同社のドル箱であるiPhoneおよび「iOS」がスマートフォン市場に占めるシェアは20%にすぎない。残り80%のスマートフォンユーザーに関するデータは、グーグルが占有しているということだ。
アップルには、検索やソーシャルネットワーク、大規模なオンライン小売業、クラウドなどデータ収集に役立つサービスがない。音声アシスタントのSiriも、今ではアマゾンのアレクサやグーグルの音声サービスに遅れを取っている。
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このように、データ収集に関わるあらゆる分野で、アップルは4強に劣る。とくに機械学習が主流となった今では、絶え間なく流入するデータの量によって、勝者と敗者の差は広がる一方だ。
アップルが今後、アルファベット、アマゾン、マイクロソフト、フェイスブックという4強に追いつくシナリオはなかなか見いだせない。
誰もが欲しがる優れたハードウエアを販売する事業は、今後も長きにわたり、実入りの良いビジネスとして続いていくだろう。それは、自動車や冷蔵庫の製造販売が良いビジネスになりうるのと同じだ。
しかし、データを活用し、機械学習を駆使した未来を新たに作り出していくという点では、ビッグ5のうちアップルを除く4強のほうが良い位置につけているようだ。
そんな中アップルは、1万2000人の従業員を巨大なドーナツ型の新社屋に引っ越しさせようとしている。2階建てのヨガルームを併設するフィットネスセンターが設けられており、その総面積は約9300平方メートルに達する。
米ワイアード誌はこの施設の内装について、このように伝えている。「カンザス州にある指定の石切場から切り出され、まるでウォッシュアウトジーンズのように『新品に見えないよう入念に加工された』大理石が敷き詰められている。このような加工が行われたのは、スティーブ・ジョブズが一番気に入っていたヨセミテにあるホテルの内装と、見た目を同じにするためだ」
豪華な社屋を建てたすべての企業が没落するわけではないが、そうした事例はこれまでも数多く発生し、注目を集めてきた。