最新記事
北朝鮮問題

半島危機:プーチン静観は、北朝鮮よりトランプのほうが危ないから

2017年4月28日(金)17時54分
ダミアン・シャルコフ

訪露した日本の安倍首相との共同記者会見に臨むプーチン(4月27日) Sergei Karpukhin-REUTERS

<トランプのシリア爆撃がトラウマのプーチンは、北朝鮮問題となると今のところ米中にお任せ。北朝鮮より予測不可能なトランプ政権を見つめるプーチンの思惑は?>

北朝鮮の核開発問題をめぐる緊張が高まるなか、不気味に静まり返った国がある──ロシアだ。

北朝鮮問題を話し合う6カ国協議のメンバーで、旧ソ連時代には北朝鮮と同盟関係を結んでいたロシアは、米朝対立が深刻化するのを横目に、ほとんど口を閉ざしている。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2週間前にドミトリー・ペスコフ大統領報道官に短い声明を発表させたが、それも非常に形式的な内容だった。

「ロシアは全ての関係国が自制し、挑発的な行為を慎むよう求める」と呼びかけたペスコフは、北朝鮮情勢を「憂慮」しているとも言った。その後のロシア政府や高官の発言からは、どの国の味方もしないという姿勢が鮮明だ。韓国と北朝鮮の対立は「外部がけしかけたもの」と言ったロシア安全保障会議のニコライ・パトルシェフ書記でさえ、名指しを避けた。

北朝鮮問題でロシアの積極的な関与を期待するのが、木曜に日ロ首脳会談でロシアを訪問した日本の安倍晋三首相だ。安倍は挑発行為を連発する北朝鮮を封じ込めるため、ロシアの支援をとりつけたい。だが専門家は、ロシアが北朝鮮問題で断固とした態度を示すことは考えにくいという。韓国であれ北朝鮮であれ、ロシアはいずれかに強く肩入れする立場にないからだ。

アラスカ沖に爆撃機飛ばす

北朝鮮問題に詳しい米シンクタンク大西洋評議会のボブ・マニングは、ロシアは北朝鮮問題に関しては「当事者だが外野」という役回りで落ち着いたとみる。

「ロシアが6カ国協議の参加国で、北朝鮮と国境を接し、北朝鮮が外貨稼ぎのために派遣してきた労働者を搾取しているのは事実だ」と彼は言う。「一方は核拡散には反対で、中国を通じて北朝鮮の動向を探ってきた」

とはいえ、アメリカが北朝鮮に対して強硬な態度を取ったときには、ロシアは存在を誇示してくる。今月中旬にロシアの戦略爆撃機が、米アラスカ州の防空識別圏内を飛行したのもそうだ。「ロシアもアジア太平洋地域で主要プレーヤーになりたいのは同じ。アメリカの好きにはさせない」

事実、プーチンはアジア太平洋地域に重大な関心を示している。昨年12月に訪日するなど日本との外交関係を強化するだけでなく、ウクライナに軍事介入して以降は、ヨーロッパ諸国との関係悪化や貿易の減少を埋め合わせるべく中国に急接近している。2015年は極東ウラジオストクで「東方経済フォーラム」を初開催し、ロシア政府一押しのソチやサンクトペテルブルグといった地方都市を世界のメディアにアピールした。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米プリンストン大への政府助成金停止、反ユダヤ主義調

ワールド

イスラエルがガザ軍事作戦を大幅に拡大、広範囲制圧へ

ワールド

中国軍、東シナ海で実弾射撃訓練 台湾周辺の演習エス

ワールド

今年のドイツ成長率予想0.2%に下方修正、回復は緩
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中