半島危機:プーチン静観は、北朝鮮よりトランプのほうが危ないから
そう考えれば、プーチンには朝鮮半島で起きる重要な話し合いを欠席する余裕などない。対立が先鋭化するアメリカの新政権との関係を考えれば尚更だ。
トランプ自身も言ったように、トランプ政権下で米ロ関係は悪化した。4月中旬にロシアの首都モスクワを訪問したレックス・ティラーソン米国務長官は、米ロ関係は「最悪の状態」と認めた。主な理由は、大統領選中にあれほど親ロシアを叫んだトランプが、その政策を一つも実行に移さないからだ。ジェームズ・マティス米国防長官とティラーソンはウクライナとNATO(北大西洋条約機構)への支持を表明。しかもトランプ政権は4月上旬、ロシアが支援するシリアのアサド政権にミサイルを撃ち込み、米ロの早期の関係悪化は決定的になった。
ミサイル攻撃でロシア側に犠牲者は出なかったが、「ロシアは冷や水を浴びせられた」と言うのは、カーネギー国際平和財団モスクワセンターのロシア外交政策専門家アレクサンダー・ガブエフだ。アメリカの軍事行動にショックを受けたロシアは、自国領土に近い太平洋地域で、ましてや核兵器が絡む場合には、シリアと同じ目に遭うのをなんとしても回避したいのだという。
「ロシアは今、トランプは予測不可能で、北朝鮮問題はトランプ政権の手に負えない(から何をするかわからない)と考えている」とガブエフは指摘する。
北朝鮮は怖くないロシア
だからといってロシアには、北朝鮮の核武装を黙認するつもりはない。「ロシアは北朝鮮の核保有によって、韓国や日本まで核保有国になる事態を望まない」とマニングは言う。
ガブエフの指摘通り、表向きでロシアは北朝鮮による核開発を非難するが、現実には北朝鮮に対する抑止力をほとんど発揮してこなかった。
「リスクの高い瀬戸際外交は北朝鮮の常套手段だが、これはロシアにも非常になじみがある。ウクライナ東部ドンバスやシリアでやったのも、ある意味で同じことだ」とガブエフは言う。「ロシアはそのやり方を熟知しているので、北朝鮮が自暴自棄に陥っているとは考えない」
北朝鮮問題でロシアの態度があいまいなのは、トランプ政権が信用できないので関わり合いにはなりたくないと思う反面、アジア太平洋の大国として認められたいという気持ちもあるからだと、ガブエフは言う。
「最終的には、ロシアは存在を誇示してくるはずだ」
(翻訳:河原里香)
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