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日本で鍛えられた「中華スマホ」の代表格ファーウェイ

2017年4月18日(火)18時27分
佐野正弘(モバイルジャーナリスト)※東洋経済オンラインより転載

ライカと共同開発し、カメラを2つ備えた「デュアルレンズ」機構を取り入れた「HUAWEI P9」。当初6万円近い値付けにもかかわらずヒットしたことは、業界に驚きをもたらした(著者撮影)

中華系スマートフォンメーカーの中で、今最も人気なのが中国・ファーウェイ(華為技術)だ。最近ではヒットモデルを連発し、家電量販店やECサイトのデータを基にした「BCNランキング」では、スマホのメーカー別年間販売数で4位を獲得するなど、日本で大躍進を遂げている。

ファーウェイの設立は1987年。元々は携帯電話のネットワーク構築に必要な、基地局などの通信機器を提供する企業だった。その後、携帯電話端末も手掛けるようになり、現在は通信機器、端末いずれの分野においても世界有数の企業に成長。スマホの販売台数シェアでは韓国サムスン電子、米アップルに次ぐ3位の座を確保している。

ファーウェイは昨年、「HUAWEI GR5」「HUAWEI P9lite」、そして楽天モバイルが独占販売する「honor 8」など多くのヒットモデルを送り出した。日本のSIMフリー(どの携帯会社の通信回線でも利用できる)スマホ市場において、一躍、中心的存在に躍り出たのだ。

「安くなければ売れない」、定説を覆した!

中でも同社の実力を強く印象づけたのは「HUAWEI P9」だ。

P9は独ライカと共同開発のレンズを採用したカメラを2つ搭載し、一眼レフカメラのような「ボケみ」のある写真を手軽に撮影できる「デュアルレンズ」機構を備えたハイエンドモデル。端末の出来のよさは発表当初から評判となっていたが、驚いたのは、発売当初に6万円近い値付けがなされていたにもかかわらず、ヒットを記録したことだ。

それまで、SIMフリースマホの売れ筋モデルは3万円以下のものが大半を占めており、「安くなければ売れない」というのが半ば定説となっていた。

にもかかわらずP9は、その倍近い値付けながら、カメラ機能の楽しさや性能・質の高さなどから人気を呼び、従来の業界の常識を大きく覆したのだから、その意味は大きい。

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今年3月、ファーウェイはフラッグシップモデルの「P9」および「P9 Plus」の世界出荷台数が1200万台を突破したと発表した(写真:ファーウェイ)

こうしてミドル、ローエンドだけでなく、ハイエンドでもヒットモデルを生み出したことから、ファーウェイは日本市場へのコミットをより一層強めている。昨年4月には東京・銀座に、そして今年2月には大阪・梅田にユーザーサポートの拠点となるカスタマーサービスセンターを構えるなど、顧客満足度を高めるためのサポートにも力を入れ始めているのだ。

高機能のヒット端末を武器に、日本市場で存在感を増すファーウェイ。中華スマホの中でも最大の注目株といっていいだろう。しかし、同社のこれまでの歴史を振り返ると、その道のりは決して平坦なものではなかった。

ファーウェイは、2007年に携帯電話事業に新規参入したイー・モバイル(現在はソフトバンクが展開する「ワイモバイル」のブランド)に向け、基地局などを提供したことで日本への進出を本格化。その後端末も提供するようになった。2009年にヒットしたイー・モバイルのWi-Fiルーター「Pocket WiFi」を手掛けたのも同社である。

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