最新記事

米軍

米軍が「すべての爆弾の母」をアフガニスタンのISIS拠点に投下

2017年4月14日(金)14時08分
トム・オコナー

およそ11トンの爆薬を装填したMOABは別名「すべての爆弾の母」 Elgin Air Force Bace/REUTERS

<米軍がアフガニスタンのISIS支配地域で、通常兵器としては最大級の超大型爆弾を使用。イラク戦争当時から前線に配備されてきたが、実戦に使用されるのは初めて。北朝鮮に対する牽制、との見方もある>

米軍は現地時間の13日夜、アフガニスタン東部で、テロ組織ISIS(自称イスラム国)の支配地域にある地下施設への攻撃に、核兵器を除く通常兵器では最大級の爆弾「大規模爆風爆弾(MOAB)」(別名で「すべての爆弾の母」とも呼ばれる)を使用した。

米空軍の輸送機が、東部ナンガルハル州のISIS傘下の武装勢力が潜んでいると見られる洞窟やトンネルなどで繋がった地下施設に向けて投下した。国防総省によると、爆弾には11トンの爆薬が装填され、実戦で使用されたのは今回が初めて。

【参考記事】病院テロが物語るISISのアフガニスタン浸透度

トランプ大統領は、ホワイトハウスの記者団に対して「アメリカには素晴らしい軍隊がある。米軍をとても誇らしく思うし、今回の作戦もまた成功裏に遂行された」と語った。

今回の攻撃にトランプ自身が関わっていたかどうかは明かさなかったが、米軍の意志決定と爆撃の遂行について称賛した。

さらにトランプは、「米軍は世界一の軍隊で、通常通り作戦を遂行した。米軍にはすべての権限を付与しているし、それが実行されただけだ」と語った。

今回使用されたMOABの「GBU-43」は、2003年にフロリダ州の空軍基地でテストが実施された後、当時始まったばかりのイラク戦争での使用に備えて湾岸地域に配備された。米軍がイラクで展開していた「衝撃と畏怖」作戦の一環として、当時のフセイン大統領指揮下のイラク軍を降伏させるために使用が検討されていた。

9.11テロの後に侵攻

大規模な歩兵部隊を一網打尽にしたり、バンカー(掩蔽壕)に隠れた敵や、今回のように地下施設に潜む敵を攻撃したりするために開発されたと言われている。

【参考記事】空爆だけではISISはつぶせない

この地域では、先週8日にISISの掃討にあたっていた米軍特殊部隊の兵士が作戦中に死亡したばかりだった。

米軍は2001年の同時多発テロの後、イスラム原理主義勢力のタリバンによる政権を転覆するためにアフガニスタンに侵攻した。昨年、前オバマ政権の下で米軍のほとんどはアフガニスタンから撤退したが、現在でも約9800人の兵士が反政府勢力と戦う現地治安部隊の支援のために残っている。

【参考記事】米軍は5年前、女性兵だけの特殊部隊をアフガンに投入していた

ここ数年アフガニスタンでは、数百人のISIS傘下の武装勢力が支配地域を拡大し、シーア派勢力を攻撃している。またアフガニスタン土着の勢力のタリバンとISISは、敵対関係にある。

今回のMOAB攻撃について、国防総省ではISIS掃討作戦の一環と説明しているが、先週のシリアの空軍施設への爆撃同様、米軍の軍事力を誇示して北朝鮮が核実験やミサイル実験など新たな挑発行為に出ないよう牽制しているという見方もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米共和強硬派ゲーツ氏、司法長官の指名辞退 買春疑惑

ビジネス

車載電池のスウェーデン・ノースボルト、米で破産申請

ビジネス

自動車大手、トランプ氏にEV税控除維持と自動運転促

ビジネス

米アポロ、後継者巡り火花 トランプ人事でCEOも離
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中