人手不足でもIT投資増えない日本の謎 停滞続けば国際競争で埋没
内閣府は、今回の日銀短観の17年度計画について、ここ数年と比べれば発射台としては悪くないが、水準としてまだ足りないと指摘。「情報化投資が低調であれば、日本は第4次産業革命に乗り遅れかねない」と危機感を示している。
この1年間の情報化業界の受注額を経済産業省の「特定サービス調査」でみると、情報サービス受注額は、今年1月が前年比0.7%増。過去1年間をならせば、ほぼ伸び率はゼロ%。
内閣府は、背景の1つに企業の投資意欲の減退を指摘する。13年ごろまでは情報化時代を迎えてIT投資も活発化していたが「経営陣と中間管理職の権限見直しが遅れ、情報化投資の効果が生産性の向上に結びつかず、投資しても無駄というトラウマを生んだ」(内閣府関係者)とみている。
また、総務省が16年2─3月に大・中小企業600社を対象にIoT導入に関して調査したところ、15年の実績値は米国が40%台と群を抜いて高かったが、それ以外の英、独、日、中、韓は20%台で横並びだった。
ところが、20年の計画値を聞くと、日本以外は70%超の水準まで上昇するものの、日本は40%台にとどまり、劣後することが明白になった(16年情報通信白書)。
こうした情報化投資の遅れは、生産性と競争力の格差に直結する。経済協力開発機構(OECD)調査によると、先進7カ国の労働生産性の比較で日本は最下位。15年時点で日本は、米国の6割強の水準にとどまり、90年代以降の日米格差の拡大傾向に歯止めがかかっていない。
第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生氏は「最近のIT投資は攻めの投資のはずが、いつのまにか守りの投資になってきているのではないか。IT活用の仕方や組織が柔軟性に欠けるという、日本企業に特有の課題がありそうだ」と指摘する。
その上で「マクロの設備投資金額が増えればよいという発想から、投資が生産性上昇にどの程度寄与する内容なのかを重視すべき。エコノミストや政策当局者の注目点が、切り替わっていくことも期待したい」としている。
(中川泉 編集:田巻一彦)
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