朴槿恵大統領罷免とTHAAD配備に中国は?
なぜなら、そのタイミングにピタリと合わせて、3月7日、THAADの韓国配備が始まったからだ。韓国国防部は、6日夜、THAAD発射台2基などが韓国に到着したことを明らかにした。2カ月以内には残りの装備の搬入も終わり、4月にはロッテグループが韓国国防部に売り渡した星州ゴルフ場跡に移され、発射可能な段階に入る予定になっている。
中国の中央テレビ局CCTVはこれに関して速報で報じた。また中国外交部報道官は8日の定例記者会見で、「われわれは必ず必要な措置をとって中国自身の安全と利益を守る。このこと(THAAD配備)が招く全ての結果は、米韓が責任を負わなければならない」と強い語調で米韓を批難した。
この「必要な措置」とは何を指すのか。
2月23日、中国国防部の報道官は、韓国のロッテグループが韓国国防部とTHAAD配備のための土地の交換契約をすると宣言したことに対し「中国の軍隊はすでに必要な準備をしている」と宣言している。つまり「いざとなれば、軍事力を行使する」という意味だ。中国のネットは一斉にこの言葉を転載し、中には「国防部:THAADの問題は中国の軍事力にモノを言わせる」といった表現で伝えているものもある。
王毅外相:武力より対話を!
このように脅しておきながら、3月8日、王毅外相は全人代(全国人民代表大会)の外交部記者会見で、以下のように抗議した。
1.朝鮮半島の情勢は、まるで二本の列車が互いに譲らず絶えず加速しながら走っているようなものだ。双方とも正面衝突をする準備ができているのだろうか?赤信号をつけ、ブレーキをかけろ!
2.中国は二本のレールのポイントを切り替える役割を果たす。(中国が唱えてきた六者)会談の道に戻る以外に、解決の道はない。
3.韓国は崖っぷちから馬を引き返せ!THAADを配備すれば、韓国は今よりももっと危険な状態に追い込まれる。
この3番目に書いた「馬を引き返す」役割を、中国は次期大統領候補・ムン氏に期待しているのだ。ムン氏が2015年末の慰安婦問題に関する日韓合意を覆す可能性があるように、すでに配備が始まったTHAADを、有名無実化する可能性があるというのが、中国の思惑だ。
しかしそうなった場合、米韓関係はどうなるのか?
米中首脳会談を4月に?
そしてTHAAD配備に着手してしまったアメリカと中国との関係はどうなのか?
もちろん安倍首相訪米前夜に、トランプ大統領は習近平国家主席と電話会談をして、「一つの中国」を尊重すると伝えた。王毅外相はこのことに触れて、米中両国の関係は「良い方向に向かっている」とした。しかしTHAAD配備の既成事実化に着手したアメリカと、どのようにして「良い方向に」向かい得るのか?