金正男の遺体は北朝鮮へ マレーシア大使館員も平壌から帰国
マレーシアの現地メディア中國報によれば、30日午後7時23分ごろ、クアラルンプール空港発のマレーシア航空MH360便に金正男の遺体が乗せられたという。また、同じ便の搭乗者名簿には、今回の事件の容疑者とみられている北朝鮮大使館2等書記官ヒョン・ガンソン(44)、北朝鮮国営航空の職員キム・イクヨル(37)の名前が確認された。しかし、リ・ジウという名前で知られるもう1人の容疑者については、搭乗者名簿に名前が載っていなかったという。
韓国メディア聯合ニュースが現地消息筋からの情報として報じるところでは、マレーシア当局は北朝鮮側と25日から政府施設で交渉を行い、26日には初めて駐マレーシア北朝鮮大使館へ警察当局者の立ち入りを許され、ヒョン・ガンソン、キム・イクヨルら今回の事件の容疑者たちへの聴き取りを2時間半かけて行っていた。この交渉でマレーシアと北朝鮮との間で大枠の合意がなされたとみられる。
北朝鮮も同時に声明を発表
マレーシアの発表とほぼ同時に、北朝鮮の国営朝鮮中央通信も両国の共同声明として「朝鮮民主主義人民共和国は、死者の家族から遺体と関連した全ての書類を提出したことにより、遺体を共和国の死者の家族の元へ戻すことで同意した」と発表した。
韓国メディアNEWSISによれば朝鮮中央通信はさらに、「双方は両国関係の重要性を再認識した。これに関連し、両国は無査証制度を再導入する問題を前向きに討議することとし、二国間関係をより高い段階へと発展させるために努力することで合意した」とも述べ、今回の金正男暗殺事件をめぐって対立が高まった両国関係の改善しようとする動きを強調した。
今後の展開は?
北朝鮮に足止めされていた大使館関係者の無事帰国を実現できたマレーシアだが、北朝鮮との共同声明にあるような両国関係の再構築は難しいと言わざるを得ない。自国の国際空港で猛毒のVXを使った殺人事件を起こされた主権侵害はもとより、緊張が高まると相手側の国民をなかば拉致するかのような暴挙にでる北朝鮮と正常な国交回復は望むべくもない。
一方で、マレーシアのナジブ首相は事件の捜査を継続すると断言したが、今回北朝鮮大使館から2人の容疑者が帰国したことで、暗殺を実行したインドネシア人シティ・アイシャとベトナム人ドアン・ティ・フォンだけが残ることになり、真相究明はほぼ不可能になったといえる。さまざまな問題を起こしたとはいえ、事件はほぼ北朝鮮の思い描いた結末通りの幕引きとなりそうだ。