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中東

困窮エジプトの無謀な宇宙開発

2017年3月29日(水)10時30分
ルース・マイケルソン

政府寄りのエコノミストであるモフタル・アル・シェリフは、経済危機の時こそ貧困を切り抜ける一助となるインフラの整備に大掛かりな投資をするべきだと主張してきた。「ビルを建てるには、まず土台を築かなければならない」

アデルヤヒアも、独自の衛星を打ち上げなければエジプトは中東の他の国々に後れを取ると主張する。エジプトの近隣諸国は、そうしたプロジェクトの経済的恩恵を力説してきた。

イスラエルは宇宙計画の拡張で最高60億ドルの収入が期待できると主張。アラブ首長国連邦(UAE)はNASAで1万7000人余りのスタッフが働いていることを引き合いに出して、火星へのミッション計画などの宇宙プログラムが雇用創出に役立つと主張している。

多くのエジプト人は政府の主張に懐疑的だ。「国の言うことをうのみにはできない」と、ある若いウェブ開発者は匿名を条件に語る。テクノロジーに通じた22歳の青年なら宇宙計画の話に刺激を受けそうなものだが、彼は納得していない。

「巨額の援助のおかげで資金には困らないかもしれないが、そのカネの使い道は闇に包まれたままだ。計画が実現するかどうかすら疑わしい」

IMFは今春、エジプトに次期融資を行う。しかしエジプト経済が長期的に安定するかどうかは、月の裏側と同じでなかなか見通せない。

[2017年3月28日号掲載]

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