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米中関係

ティラーソン米国務長官訪中――米中の駆け引き

習近平国家主席は「両国は一時、危機的な状況にもあったが、トランプ大統領との電話会談などによって良好な関係を続けている」とした上で、おおむね次のように述べている。

――中米両国は非常に良好なパートナーシップを継続することができると信じている。両国が協力して敏感な問題を解決し、中米の新しいスタート地点に立たなければならない。協力こそが唯一の正しい道である。相手の核心的利益を互いに重んじなければならない。

これに対してティラーソン国務長官は「トランプ大統領は習近平国家主席との電話会談を非常に重視しており、一刻も早く両国の首脳会談が実現することを期待している」と述べた。そして「中米関係は衝突せず、互いに尊重しウィン-ウィンの関係に基づいて、未来の50年の中米関係の発展の方向性を確定していかなければならない」などとした。

まあ、なんとも歯が浮くような外交儀礼ではないか。

トランプ大統領は「すべての選択はテーブルの上にある」として、北朝鮮に対する武力攻撃も辞さない構えだし、「北朝鮮を説得できない責任は中国にある」と何度も形を変えて発信している。

そして中国もまた、THAAD(サード)の韓国配備に着手したアメリカを、口を極めて非難し、「アメリカがTHAAD配備を中止し、大規模米韓軍事演習をやめない限り、朝鮮半島の平和は来ない。平和を乱しているのはアメリカだ。他国の玄関の前で喧嘩をするな!」と言い続けてきた。

だというのに、実際に会えば、この「きれいごと」!

サードの「サ」の字も、互いの口からは出て来なかった。

中国メディアにおける挑戦的な発信

中国のネットには、THAADの韓国配備に対する威嚇的な発信が充満している。

まず「サードの韓国入りに対する中国の報復は、ロシアよりも残忍無慈悲だ」というのがある。ここでは韓国に対する経済的報復を主として論じており、また「サードの韓国入りは、韓国経済を十年二十年も後退させるだろう」といった種類の情報もあり、「中国は多くのカードを持っている」という脅しも、早くから出ていた。

その多くのカードの中に「軍事行動」がある。

3月12日付の本コラム「パク大統領罷免とTHAAD配備に中国は?」で書いたように、中国外交部報道官は8日の定例記者会見で、「われわれは必ず必要な措置をとって中国自身の安全と利益を守る。このこと(THAAD配備)が招く全ての結果は、米韓が責任を負わなければならない」と強い語調で米韓を批難した。また2月23日、中国国防部の報道官は、韓国のロッテグループが韓国国防部とTHAAD配備のための土地の交換契約をすると宣言したことに対し「中国の軍隊はすでに必要な準備をしている」と宣言している。さらに「国防部:THAADの問題は中国の軍事力にモノを言わせる」とした情報が中国のネット空間を飛び交った。

これをトランプ政権の外交・国防関係者が見落とすはずがない。

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