最新記事

米中関係

ティラーソン米国務長官訪中――米中の駆け引き

2017年3月21日(火)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

極端に顔を近づけてティラーソン米国務長官(左)を「威嚇」する中国の王毅外相(3月18日、北京)  Mark Schiefelbein-REUTERS

北朝鮮に対していかなる手段も辞さないとするトランプ大統領の使者として訪中したティラーソン国務長官は習主席らと会見したが、中国に圧力を掛けられたのか?帰国と入れ替えに六者会合の米代表が訪韓している。

王毅外相の超「上から目線」態度

15日に訪日したアメリカのティラーソン国務長官は、17日に訪韓したあと、18日から北京入りした。その日のうちに中国の王毅外相と会談したが、目立ったのは王毅外相のティラーソン国務長官に対する激しい「上から目線」だ。

実は王毅外相とティラーソン国務長官は今年2月16日、17日にドイツのボンで開催されたG20外相会談で対談している。

そのときの王毅外相の「目に余るばかりの先輩づら!」に驚いたことがある。いま残っている動画で彼の動作を全て表しているものは少ないが、たとえば2月18日に報道されたこの報道などから、その一端がうかがわれよう。

王毅外相はティラーソン国務長官と会うなり、「さあ、こっちは外交のベテランだぞ!」と言わんばかりの手振りでティラーソン国務長官の動きを圧倒し、次の動作に一瞬間迷ったティラーソン国務長官の機を捉え、リードするように腕一杯を用いた手先で誘導し、常に主導的姿勢を貫いた。

その腕と顔は、「さあ、たじろげ!」という威圧を相手に与えるに余りある。

「外交」とはこういうものだ、と、「ビジネスマン」で政治経験のないティラーソン国務長官に最初のジャブを打った格好だ。

今般の北京における会談にしても、あくまでも「上から目線」。

ネット上に公開されているものでは、十分には見られないが、先ずはこの中国外交部のウェブサイトにある「最初の表情」をご覧いただきたい。生中継の時にあった部分はカットされているが、右手を相手の方に回して自信ありげに次の動作に誘導するしぐさだけは見て取れよう。

いくらか冒頭のカットが少ないのが民間のこの動画。我慢強く広告宣伝を十数秒間待ってからしか観たい画像が出て来ないが、ここは我慢願いたい。

実は両者が近づいてから、王毅がティラーソンの肩に手を回すまでの間に、王毅外相は顔を10センチくらいの近さまでティラーソン国務長官の顔に近づけ、左手の指を振りながら相手の顔をほぼ刺さんばかりに指さし、実に傲慢で非礼な動作をしている。この動画でも、その部分はカットされているので観られないが、外交部の動画よりは、いくらか見て取れる。

要は、「アメリカに負けてなるものか!」というボディ・ランゲージを使って、まずは習近平国家主席に会う前の準備運動をさせたということだ。

習近平国家主席との会談

習近平国家主席は19日にティラーソン国務長官と人民大会堂で会談を行ったが、もう事前にジャブは効かせてあるので、ここは威厳を保つために泰然としていなければならない。

その様子を中央テレビ局CCTVはこのように伝えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、トランプ氏発言で危険にさら

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 4
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中