どうなるポスト朴槿恵の韓国
弾劾訴追案の可決から今日までの韓国内の雰囲気(韓国で言うところの「時代精神」)は、「政権交代への熱望」にあふれていた。したがって、選挙戦は野党陣営有利で進むことになるが、大統領罷免を受けて理念対立のさらなる深刻化など国内状況に変化が起これば、それは選挙戦の動向にも影響を与えることになる。
第2の候補者についても、各種世論調査結果から現状では野党優勢が明らかである。3月10日発表の韓国ギャラップ調査によれば、最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)元代表が32%の支持を得てトップを走り、同じ党の安煕正(アン・ヒジョン)忠清南道知事と李在明(イ・ジェミョン)城南市長がそれぞれ17%、8%の支持を得ている。
今後約ひと月かけて行われる党内予備選挙では、文・元代表優勢が予測されるが、安知事がどこまで支持を伸ばせるかが注目されている。第2野党「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)氏の支持が9%にとどまる中、共に民主党の候補になった者が本選挙でも有利な戦いを進めることは間違いない。
国論分裂の中いかに戦うか
一方、与党陣営には有力候補が不在であり、そのためもあって現在大統領権限代行を務める黄教安(ファ・ギョアン)首相が9%の支持を集めている。しかし、朴槿恵政権の首相である黄氏が出馬を表明すれば、政権交代を望む国民から大きな反発を招くのは必至である。
以上を踏まえると、野党候補の有利は揺るぎないかに見える。しかし、第3のポイントである選挙構図がどうなるのかによって、選挙結果は大きく変わりうる。つまり、保守対進歩(与党系対野党系)候補の一騎打ち、つまり2大対決になるのか、あるいは有力候補が複数出馬して3者対決、4者対決になるのかは、有権者の投票行動に大きな影響を及ぼしうる。
現在のところ可能性は高くないが、かりに2大対決となれば保守勢力の結集が起こり、保守系候補がかなりの票を獲得するかもしれない。これから約2カ月のあいだに、各党、各勢力がどう連携するのか、さらには候補者一本化の動きがあるのかどうか、から目が離せない。
最後に、次期韓国大統領は、誰が就任しても、国政運営にあたり大きな困難に直面することになる。朴槿恵政権下で先鋭化した保守対進歩の理念対立、弾劾政局が続く中で深まった国論分裂の中で、新政権をスタートさせなければならないからである。
歴代大統領選挙と異なり、選挙直後から新政権の発足となるため、過去の政権交代では約2カ月間あった政権移行期間は存在しない。そのため、歴代政権が当選から政権発足までの間に行ってきた、選挙公約を踏まえた国政課題の決定や次期政権人事の選定のための時間がない。