マレーシア、北朝鮮の容疑者を釈放 金正男事件の捜査は暗礁に?
実行役の女2人は有罪の場合「拷問のうえ死刑」
結局、今回の事件で責任を問われるのは、北朝鮮の手先として犯行をした2人の外国人女性だけになりそうだ。1日マレーシア警察当局は、金正男暗殺事件の容疑者として拘束しているベトナム国籍のドアン・ティ・フオン(28)と、インドネシア国籍のシティ・アイシャ(25)を殺人の容疑で起訴した。
韓国メディア朝鮮日報によれば、1日午前9時半すぎ、武装した警察官200人が警戒する中、マレーシアのクアラルンプール郊外にあるセパン裁判所に到着した容疑者2人は、裁判所の裏口から庁舎内に入っていった。2週間前にマレーシア警察当局が2人を逮捕したときに公開した写真と同じく、フオンは黄色のシャツにジーンズ、アイシャは赤いTシャツにジーンズという姿で、ともにTシャツのうえに防弾チョッキを着ていた。2人とも2週間にわたる拘留と取り調べのため疲れ果てた表情を見せた。
裁判は警察の要請により非公開で進行し、法廷にはクアラルンプール駐在のインドネシア大使代理ほか両国領事業務担当者や弁護士、ベトナム語とインドネシア語の通訳などが同席し、1時間ほどで終わったという。マレーシア検察は、起訴状の中で、2人について「北朝鮮国籍の"キム・チョル"を殺害した容疑がある」と述べた。金正男は殺害当時、キム・チョルと記載された外交旅券を所持しており、公式には身元が確認されていないからだ。故意の殺人犯に対して無条件に死刑に処すという刑法302条をもとに、検察がマレー語で読み上げた起訴状の最後は、「有罪が確定した場合、拷問を加えて死刑に処す(diseksa dengan bunuh)」というものだったという。
BBCによれば、起訴内容について理解したかと問われたフオンは、「I understand but I am not guilty.(理解したが、私は無罪です)」と叫んだという。また、フオンの弁護士セルバム・シャンムガンは閉廷後、記者たちに「彼女は死刑になる恐怖に苦しんでいる」と語った。
2人は起訴手続きを終えた後、近くの警察署に護送され、来月13日シャーアラム高裁で行われる初公判を待つ。ネットアイドルを目指していたという2人の女が、どうして今回の事件の実行役になったのか、明らかになる日は来るのだろうか──。