最新記事

旅行

飛行機での出張はVR導入でどれだけ快適になる?

2017年2月13日(月)12時49分
トニー・ドノホー(エクスペディア社CTO) ※編集・企画:情報工場

残念ながら一般消費者向けの販売は中止になったが、グーグル・グラスは現実を拡張するデバイス技術の方向づけをしてくれた。おかげで我々はVRに関して、共通のイメージを持ちながら話ができるし、仕事や娯楽に役立てられる。

同一規格で誰もが同じように使え、(誰も子どもじみたものと思わない)ユニバーサルなVRデバイスが登場する可能性は、今はまだ高くないかもしれない。それでも今あるVR装置で十分にビジネスでの顧客体験をより良いものにできる。

カンタス航空は業界初の機内VRサービスを試験導入

想像してみてほしい。あなたはビジネスクラスの空港ラウンジでリラックスしながらVRヘッドセット(オキュラスリフトのようなVRデバイス)を装着している。すると、そこから一歩も動くことなく、フライト時刻の変更や搭乗案内などの情報、メールなどを受け取ることができる。しかも好きなテレビ番組を観ながら。

変更になったフライト時刻を確かめるために、掲示ボードの前まで走る必要はない。イスとVRヘッドセットさえあれば、必要な情報を受け取りそびれることなく、フライトまでゆったりと過ごせるのだ。旅行情報サイト「ツヌーズ(Tnooz)」の編集デスク、ケビン・メイは「現代の旅行者はモバイル機器で得られる無駄のない経験を求めている」と語っている。

出張族のビジネスパーソンにとっては、「連絡が途切れない」ことが肝要だ。VRを使えば、出張でたびたび会社を留守にする人でも、電話会議やビデオチャットで、どこにいようと同僚や上司とつながることができる。VRで会議を開くことだって可能だ。

2015年、カンタス航空は業界初の機内VRサービスを試験的に導入した。乗客はサムスン製のVRヘッドセット「Gear VR」を装着することで、3Dの映画を鑑賞したり、目的地の観光スポットのバーチャルツアーに参加できた。3カ月限定のこのサービスを利用した乗客たちは、近未来にどんなことが実現されうるのか、そのさわりだけでも感じられたのではないだろうか。

飛行機での出張が多いビジネスパーソンならわかると思うが、機内での行動は、仕事の遅れを取り戻すか、くつろぐかのどちらかだ。主にくつろぐ方を選択した場合、前席の背もたれの裏側についているビデオスクリーンを眺めるのが一般的だ。

近未来には、VRデバイスがそんな旧式の娯楽にとって代わるだろう。個々のデバイスが、各々のパーソナルなビデオコレクションにつながり、好きなコンテンツを楽しめる。ネットフリックスのような定額制動画配信サービスを利用すれば、普段から楽しみにしている連続番組の続きを観ることも可能だ。

こうしたサービスの実現可能性と品質の保証は、航空機メーカーがどれだけ高速で接続品質のよいWi-Fi回線を民間航空機に組み込めるかにかかっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中