ドイツ「庶民派」シュルツ氏、連邦議会選でメルケルに勝てるか
65分に及ぶ演説のなかで、シュルツ氏は雇用不安と高齢者の貧困に的を絞り、年金制度の維持と非正規雇用契約の縮小、加えて前回、SPDが政権を率いていた当時に導入した労働改革「アジェンダ2010」の一部見直しを約束した。
「わが国に数十億ユーロもの財政黒字があるなら、これを高所得者向けの減税に使うべきではなく、投資に回すべきだ」とシュルツ氏は述べ、教育、インフラ、デジタル技術への投資拡大を要求した。
投資拡大を優先する点で、シュルツ氏はメルケル政権のジョイブレ財務相とは好対照である。同財務相は財政均衡をあくまで追求し、財政黒字は当面の債務返済と選挙後の減税に使いたいとしている。
SPDとしても、いわゆる「債務ブレーキ」の解除には踏み込まないだろう。この原則の下、政府は毎年、国内総生産(GDP)の0.35%相当までしか新規国債を発行できないことになっている。
「それは議論にもなっていない。誰もそのような話はしていない」とシュルツ氏の盟友でSPD副党首を務めるラルフ・ステグナー氏はロイターに語った。
だが、シュルツ氏が率いる政権が誕生すれば、ユーロ圏諸国に経済改革を求める際にも、ギリシャによるユーロ離脱の憶測を生むほど強硬だったショイブレ財務相のやり方に比べて、もっと寛容なアプローチが取られるだろう。
<対ギリシャ方針で違いを強調>
メルケル首相の下でドイツは、諸国の先頭に立って、ギリシャに対し支援の条件として財政緊縮を求めた。
メルケル政権はギリシャ政府に対し、国債償還を除くプライマリーバランスでGDP比3.5%の黒字を達成し、それを維持することを求めた。ドイツ政府は、ギリシャ政府がこの目標を達成できれば債務免除はまったく必要なくなるだろうと主張した。
これに対してSPDは、ギリシャが受け入れるべき財政緊縮を緩和する姿勢を見せている。
「ギリシャは大規模な改革を行なわなければならず、一般の国民に重い負担がかかっている」とステグナー氏は述べ、ギリシャ政府がすでに黒字を達成したと指摘する。「だがそれでもショイブレ氏には十分ではないという。この問題に対するSPDの姿勢はまったく異なる」