オーストラリアの難民政策は「人道に対する罪」、ICCに告発
今月撮影されたパプアニューギニア・マヌス島の収容施設の様子 Behrouz Boochani-REUTERS
<国外の収容所で難民を虐待するオーストラリア政府の行為に関し、人権弁護士らがICCに訴追を要求。先進国が人道犯罪で国際的に裁かれる最初の例になるかもしれない>
米スタンフォード大学ロースクールの国際人権クリニックは先週、著名な人権弁護士が名を連ねる108ページの報告書を国際刑事裁判所(ICC)に提出した。オーストラリア政府と民間請負業者の「人道に対する罪」を告発し、訴追を促すものだ。
ICCではこれまで、主にアフリカや旧ユーゴスラビアのような途上国における大量虐殺や戦争犯罪を審理してきた。オーストラリア政府や企業が訴追されれば、先進国では初の事例となる。
報告書は、オーストラリアの歴代政権が難民や移民に対する人道犯罪を知りながら放置していたと主張する。被害者側にもし「罪」があるとすれば、迫害から逃れてオーストラリアに保護を求めたことだけだ、と──。
欧米では最近、長い苦労の末に勝ち取った国連難民条約の難民保護規定を放棄しようという動きが目立っている。国家ぐるみの難民虐待をICCに提訴するには今が絶好のタイミングだ。ICCにとっても、自分たちは途上国の犯罪だけを扱うのではなく、先進国の犯罪も裁く意志があると示せる重要な機会だ。
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わざと非人道的な環境に
今回問われている人道に対する罪のなかには、拷問や強制退去などが含まれる。いずれも、2001年の9.11テロ後にテロ予防策としてオーストラリアが導入した難民抑制策「パシフィック・ソリューソン(太平洋での解決)」に起因している。
オーストラリア政府は業者に委託し、難民や移民の上陸を船が領海に入る手前で阻止している。海上で捕まえて、そのまま南太平洋の島国ナウルやパプアニューギニアのマヌス島にある収容所に移送しているのだ。領海手前ならまだ入国前、難民条約で規定された保護の責任は負わなくてもいい、という論法だ。
海外の収容所は表向きは民営だが、実質的にはオーストラリア政府は管理している。施設の維持費を負担し、運営方針を定め、民間業者と契約して運営させている。人権団体は収容所ではびこる深刻な暴力と虐待を何度も訴えてきた。だがその非人道的な状態を作り出すことこそが、オーストラリア政府の狙いだという。
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そしてこの犯罪は、政治信条の右や左とは関係なく続いている。オーストラリアの現在の政権与党は中道右派の自由党だが、難民や移民の扱いに関する基本方針は過去10年変わらず、中道左派の労働党政権下でも継続してきた。