大気汚染に悩む中国 情報公開による規制強化と社会不安でジレンマ
ただし、他国の研究者はその影響を示す証拠があると言う。
「疾病対策センターはその種のデータを持っている」と汚染と健康の関係を研究するヘルス・エフェクト・インスティチュートのダン・グリーンバウム氏は語る。
複数の海外研究には、中国では汚染のせいで早死にする人が年間100万人以上にも及んでいる可能性があると示唆している。
市民の不信感
多くの国に比べて大気汚染データのリアルタイム公開という点で先行しているにもかかわらず、中国はまだ公式統計に対する市民の疑念を克服できていない。
最近のデータ偽装も足を引っ張っている。
昨年、北西部の都市・西安にある観測所の職員が、排出物の測定数値を低下させるため、装置に細工をしていたとして告発された。
中国政府は統計データに関する不正に対しては断固たる態度で臨むと約束しており、実に1436カ所もの地方測定所を中央政府の統制下に置いた。また地方政府のデータの精度をチェックするために衛星画像も活用している。
一方で、自力測定によって法的なグレーゾーンに踏み込むことを辞さない個人もいる。「エア・マターズ」と呼ばれる携帯電話用アプリは900万人の登録ユーザーを抱えているが、公式データを当局とは違う形で処理したとして、少なくとも1つの地方政府とトラブルに陥っている。
政府自身も、民間市民によるデータを利用し始めている。
IPEが開発したアプリでは、ユーザーが汚染状況を現場から報告できるようになっているが、環境保護部はこのアプリからの情報を公式の報告プラットフォームに提供している。
IPEの馬所長によれば、水質汚染の監視は、測定装置のコストが高いためいっそう難しいという。
「彼ら(規制当局)は、データを公開するからには正確なものにしたいと考えている。次の課題は、第三者測定サービスを提供する資格を誰に与えるか見極めることだろう」
「私の感触では、今後、情報が完全非公開になることはないと思う。しかし当局は、より統制のとれた形で情報の公開を進めたいと考えている」
(翻訳:エァクレーレン)
[上海/北京 16日 ロイター]