最新記事

大気汚染

大気汚染に悩む中国 情報公開による規制強化と社会不安でジレンマ

2017年2月20日(月)16時08分

また規制当局は、ある大気汚染監視アプリが、成都が世界で3番目に大気汚染のひどい都市であることを示すデータを12月に提供し、風説を広めたとして告発している。

中国の環境監視機関は人手不足に悩んでおり、環境基準の実施に向けて市民参加を得ることに熱心だが、当局は、ソーシャルメディア主導での化学工場やゴミ焼却工場、核燃料処理施設に対する抗議が、現実の抗議行動を誘発することを恐れている。

「一般的に、省などのレベルでは、公式統計以外の情報源について全面禁止を試みることはないだろうとの希望がある。しかし彼らが本当に心配しているのは、こうした発信者が非科学的な情報を示すことだ」。そう語るのは、透明性向上を訴える非政府組織の公共環境研究センター(IPE)の馬軍所長だ。

「これは、今日のモバイル・インターネットとソーシャルメディアの時代における課題だ」

MEPからのコメントは得られなかった。

取り組みにばらつき

馬所長によれば、環境保護部の主導で公的な情報公開は進んでいるが、まだばらつきがあり、国家発展改革委員会などの機関では取り組みに遅れが見られ、一部の地方政府は「消極的で抵抗している」という。

中国は依然として、地球温暖化につながる二酸化炭素排出量についてのデータを提供しておらず、コメ栽培地域における食品不祥事に続く難しい問題である重金属汚染についても、不完全な数値しか示していない。汚染による健康上の影響に関する、扱いの厄介なデータについても、無料公開を認めることには消極的である。

たとえば、企業がスタッフの配置を決定する際に参考にしようと思っても、汚染による健康上の影響を調べられるようなデータベースは存在しない。

中国のメディアはスモッグと死亡率の相関関係について、1952─53年の冬のロンドンにおける死亡者数の多さなど、海外での研究を引用するが、これに相当するような国内研究はほとんどない。

先月、冬季特有の大気汚染が中国北部の大半を覆うなかで、衛生部は国営メディアに対し、スモッグとガンの発症を結びつけるデータは何もなく、有害な微小粒子状物質(PM2.5)が人間の健康に与える影響について結論を下すには時期尚早であると語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米サウジ投資イベント、シェブロンやファイザーのCE

ビジネス

仏、企業から92億ユーロの新規投資を獲得

ワールド

メンフィスへの州兵派遣を一時差し止め、テネシー州裁

ワールド

インドネシア火力発電の廃止計画に暗雲 先進国からの
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 7
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 10
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中