フィリピン麻薬戦争、韓国人殺害でドゥテルテ大統領が急ブレーキ
だが治安当局者によれば、大統領の決断のきっかけは、韓国人ビジネスマンJee Ick-joo氏の殺害、そして「麻薬戦争」を口実とした誘拐・身代金要求という手口があまりにも大胆だったからだという。
「あの韓国人の事件がすべてだ。この事件が起きたこと自体が、大統領を怒らせた」とロレンザーナ国防相はロイターに語った。
PDEAのディレクターとしてやはり緊急会議に出席していたイシドロ・ラペナ氏も、この展開は予想していなかった。大統領はこの場で警察を厳しく批判し、麻薬取締部門の活動停止と粛清は、今や麻薬戦争そのものと同程度に重要だと告げた、とラペナ氏はロイターに語った。
ロナルド・デラロサ国家警察長官は、ドゥテルテ大統領が今回の事件に「本当に怒り狂って」おり、緊急会議の後に、「(警察は)芯まで腐っている」と大統領が公言したことを明らかにした。
火を見るより明らか
大統領の法律顧問を務めるサルバドール・パネロ氏は、検察官出身の大統領が、厳密に法律の文言に従って決定を行っていると語る。人権団体が告発している「即決の処刑」を裏付ける証拠はないとしつつも、ドゥテルテ大統領にとって、Jee氏の殺害は反論の余地がなく、大胆不敵で厄介だと同氏は語った。「こうした犯罪が行われたことは火を見るより明らかだ」とパネロ氏は言う。
この事件によって韓国におけるフィリピンのイメージが悪化することを懸念した大統領は、パネロ氏をソウルに派遣して、大統領代行を務める黄教安首相に謝罪した。
韓国政府はフィリピン政府に対する最大の軍備品供与元であり、戦闘機や巡視船、フリゲート艦、軍用トラックを供与・売却している。
昨年1─10月にフィリピンを訪れた韓国人は約140万人で、観光客全体の4分の1を占める。目的は海水浴場や、ゴルフ、セックス産業だ。韓国人観光客の1日平均消費額は180─200ドル(約2万500円ー2万2800円)で、総消費額は米国からの訪問者の3倍に相当する。