最新記事

イギリス社会

ブレグジットの影で進んでいた「孤独」の健康被害。英国で委員会発足

2017年2月7日(火)15時30分
松丸さとみ

アメリカでも1980年代から倍増している

一方でデイリーメールは、米国では現在6000万人、成人の40〜45%が高い頻度で孤独を感じており、その数は1980年代から倍増していると伝えている。ベビーブーマー世代が高齢に近づいている今、孤独を感じる人はますます増える見込みだという。

では実際、孤独は健康にどういった影響を及ぼすのだろうか。前述のデイリーメールは、孤独が気分障害やうつ病を引き起こす可能性もあるが、心臓病や高血圧、免疫機能障害や神経系障害といった身体的な疾患との関連もあると述べている。同紙はさらに、カリフォルニア大学ロサンゼルス校で孤独による健康への影響を研究するスティーブ・コール博士による談話を紹介。同博士の2007年の研究結果では、「慢性的な孤独を経験した人とそうではない人との間には、細胞レベルで大きな違いが見られる」ことがわかったという。

孤独に苦しむ人の場合、炎症に反応する遺伝子が「オン」の状態になっているのだ。「炎症は急な怪我に反応する場合はいいが、慢性的に炎症の状態が続くと、アテローム性動脈硬化症や循環器疾患、神経変性疾患、転移性がんといった慢性病を誘発する原因となってしまう」とコール博士は話す。

孤独は「静かなる疫病」であり、心配性やうつ病よりもリスクが大きいと、コール博士は考えているという。タイムも2015年の記事で、米ブリガム・ヤング大学による調査について取り上げ、孤独が、肥満や薬物乱用に匹敵する公衆衛生上の問題になり得ると指摘していた。

上記は英米での調査結果だが、単身世帯や高齢者が増加している日本でも、孤独が健康を害する問題は他人事ではないだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 6
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 7
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中