知られざるリオ五輪もうひとつの「日本PR」
ともあれ、私はメインステージのコーディネートとMC、ライブ出演を務めただけでなく、公式サイトのポルトガル語版を作るよう要請(ブラジルで開催されるにもかかわらず日・英・仏語しかなかった)、集客のため、他のイベントやテレビ番組に出演するたびに自らジャパンハウスのイベントについて告知し、フライヤーの制作まで行った。
結果、ブラジルのマスメディアや英BBC、サンパウロの日系メディアに取材を受け、ジャパンハウスが「サンバという手法」(=歌、リズム、踊り、心意気を全員で共有し楽しむ精神)を基本コンセプトに据えたことで、観客もスタッフも一体となり盛り上がった点が最も注目され、伝えられる結果となった。
ブラジル最大手新聞O GLOBO紙では、テクノロジーの国、日本の展示は秀逸だったが、何よりサンバを会得した日本人による音楽シリーズが注目だったと大きく報じられた。
しかし日本のメディアでは、私に渡航前からコンタクトを取っていたディレクターによるNHKの1ラジオ番組のみによって少しだけ伝えられるに留まった。
そんな日本のマスコミにも問題を感じる。オリンピック・パラリンピックの競技の話題は伝えられたが、それ以外の部分では、リオの治安の悪さやジカ熱への懸念などネガティヴな内容ばかりが妙に取り沙汰され、このジャパンハウスはもとより、実際の現地リオの実情や現場の盛り上がりの様子があまりにも報じられなかった。
これも、日本のメディアにきちんとブラジルを伝えられる人材がいない、またそうした人材を登用し、ポジティヴかつリアルな紙面・番組を企画することをしなかったからだ。
実際に、オリンピック・パラリンピック期間中、ブラジルでは国をあげて治安維持やテロ対策が徹底され、世界中から訪れた観光客がリオという舞台で出会い、本来のオリンピック・パラリンピックの精神やムードにあふれた最高の時間と情熱を交歓していて、感動を分かち合っている様子が多々見受けられた。
ところでリオでは毎年、地上最大規模の祭りであるカルナヴァルが開催され、世界中から観光客が押し寄せる(現地メディアによれば、2015年には100万人が訪れた)。すなわち、世界で最もコンスタントに大規模な祭典を行うノウハウがあるのだが、日本ではあまりにもリアルな部分、ポジティヴな醍醐味が知られていない。
日本を海外に伝える努力も大切だが、海外を日本に正しく伝える努力ももっと必要ではないだろうか。
ケイタブラジル(KTa☆brasil)
東京生まれの日本人音楽家。著名なJ-POPシンガーから世界的なアーティストまで制作・共演の実績多数。1997年よりブラジルで活動。リオ市観光局公式プレゼンター。本場リオのサンバの殿堂初(G.R.E.S. Império Serrano)の外国人公式認定打楽器指導者。リオの名門クラブチームC.R.Vasco da Gamaスタジアム殿堂刻名会員。
http://www.natsu-biraki.com/artist_tokorozawa/kta_brasil.html