世界初、ビッグデータと衛星画像でGDP推計 公表値との違いも指摘
2月7日、東大大学院の渡辺努教授(写真)と同氏が顧問を務めるビッグデータ・ベンチャーのナウキャストは、人工衛星画像を利用した国内総生産(GDP)予測値の算出システムを世界で初めて開発した。都内で1月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)
東大大学院の渡辺努教授と同氏が顧問を務めるビッグデータ・ベンチャーのナウキャストは、人工衛星画像を利用した国内総生産(GDP)予測値の算出システムを世界で初めて開発した。将来は、公表データの信頼性が低い国のGDPや、把握が困難な産油国の減産協定の順守具合などの確認にも応用できるとしており、多方面への活用が期待できそうだ。
今回の予測システムでは、衛星が写した夜の明るさと経済活動の関連性に着目、各種経済指標と照らし合わせて、GDPを推計する。
具体的には、米国の海洋大気庁が運営する気象衛星「スオミNPP」が日本上空を通過する毎日午前1時30分時点の画像を購入し、縦、横720メートル四方のマス目ごとの明るさを計測する。
同じ明るさでも、農地、商業用地、工業用地など土地の用途によって経済活動の大きさが異なるため、国土地理院の土地利用調査を参照。土地の用途と、明るさが示す経済活動の相関を弾き出し、この結果を考慮した上で、明るさから経済活動の大きさを試算する。
そのうえで、鉱工業生産など各省庁などが毎月公表している経済指標を組み合わせ、内閣府が四半期に一度しか公表しないGDPを早期に予測する。本格稼働は今年夏からを目指し、予測値の公表頻度などは今後詰める。
当面は、政府の公表するGDPを正確に予測するニーズのある投資家向けに、データの販売を検討している。渡辺氏は「投資家が参照するようになれば、市場参加者の意向を把握する必要のある日銀なども参照する必要が出てくる」とみており、渡辺氏自身の古巣でもある日銀に対して説明に出向く予定だ。
システム開発を担当したナウキャスト・チーフデータサイエンティストの林祐輔氏は、経済活動が活発になれば工場の夜の操業が増え、物流量の増加により夜の道路の明かりが明るくなる点にヒントを得た。