世界初、ビッグデータと衛星画像でGDP推計 公表値との違いも指摘
人工衛星画像で夜の明るさを計測すれば、経済活動の増減が推計できるとみて、日銀に勤務していた2012年に論文を作成。渡辺氏とナウキャスト関係者が事業化を働きかけ、林氏も昨年、ナウキャストに移籍した。
林氏は九州大学で物理を専攻しており「国ごとの基準の違いなどを乗り越えた、科学的な経済指標の開発に関心があった」という。
渡辺氏によると、中期的には、1)政府統計の信ぴょう性のチェック、2)信頼に足る政府統計の入手が難しい国の経済情勢把握──などに、この予測システムを役立てたい考えだ。
アジアの夜の衛星画像をみると、朝鮮半島は北緯38度線を境に、北朝鮮側は平壌と東部港湾都市を除き漆黒の闇となっている。中国は沿岸部が非常に明るく、内陸に進むほど暗くなっている。
インドは中国などと比べ、全土が満遍なく明るくなっており、特に国境周辺が明るく「国境周辺エリアの経済活動が活発であるのが見て取れる」(渡辺氏)という。
中東のガス田の明るさなどを計測すると、生産動向が日次で把握でき、「減産合意が順守されているかなども把握可能」と渡辺氏は説明する。
従来の政府統計は、企業などが政府に報告するデータの正確性や、データの入手可能性によって精度が左右された。
衛星画像のように誰もが入手可能な公表データであれば、政府、民間の区別なく分析が可能であるため、渡辺氏はこれを「統計の民主化」と呼び、世界的な潮流になると予想している。
(竹本能文、木原麗花 編集:田巻一彦)