最新記事

TPP

TPP離脱に米農業団体が反発 アジア市場を中国に奪われる懸念

2017年1月25日(水)11時02分

1月24日、トランプ米大統領が環太平洋連携協定(TPP)からの正式離脱に関する大統領令に署名したことに国内農業団体が反発し、アジア諸国への農産物輸出押し上げに向けた代替策を示すよう新政権に求めている。写真はアイオワ州コーン畑。2012年7月撮影(2017年 ロイター/Adress Latif)

  トランプ米大統領が環太平洋連携協定(TPP)からの正式離脱に関する大統領令に署名したことに国内農業団体が反発し、アジア諸国への農産物輸出押し上げに向けた代替策を示すよう新政権に求めている。

 不振が続く米国の農業セクターはこのところ輸出への依存度を高めていたが、TPPからの離脱を受けて先行きを懸念する声が強まっている。

 米大豆協会のロン・ムーア代表は「TPPはわれわれにとって非常に有望で、ここ数年の優先課題だった。離脱には大いに失望している」と語った。

 農業全般の不調が続く中、大豆は好調ぶりが際立っており、経済成長に対してもプラスに寄与している。ただ、堅調な大豆相場を支えているのは主に海外需要だ。農務省は2016─17年の大豆輸出が過去最高の20億5000万ブッシェルに達すると予想している。

 米国は農産物の純輸出国で、TPPに参加する11カ国への輸出は15年に617億3500万ドルに上った。オバマ政権はTPPの発効によってさらに輸出が増えると見込んでいた。

 チャールズ・グラスリー上院議員(共和党)は、トランプ氏がTPPの代わりに諸外国と個別に貿易協定を結ぶ意向を示唆していると明らかにした。ただ、2国間協定の交渉は何年もかかる可能性があると指摘。「簡単ではない。日本が最優先だ」と述べた。

中国めぐる懸念

 国内農家や業界団体は、米国のTPP離脱によって諸外国の中国へのアクセスが拡大することを懸念している。

 米飼料産業協会のジョエル・ニューマン最高経営責任者(CEO)は「(アジア太平洋)地域の競争激化と、米国を除外した新たな貿易協定によって米飼料業界は輸出の機会を失っている」と強調した。

 米食肉輸出協会は、トランプ政権に貿易改善に向けた方策の具体案を示すよう求めた。

 同協会のフィリップ・セングCEOは「われわれの業界が国外の顧客の需要に引き続き応じ、輸出機会をさらに拡大できるよう、新政権にはあらゆる可能な手段を使って米国を競争力のある地位に復活させることを求める」とした。

 同協会の報道官は、TPPが発効していれば米国の食肉輸出は日本とベトナムで最も伸びた可能性があると指摘。「アジア太平洋地域へのアクセスは牛・豚肉業界双方にとって極めて重要」とした。

[シカゴ 24日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中