最新記事

日米関係

保護主義打ち出すトランプ大統領、日米関係は混迷の時代へ?

2017年1月21日(土)13時14分

1月21日、米国のトランプ新大統領(写真)が20日の就任演説で明確に打ち出したのは、保護主義的な政策による「米国第一主義」だった。ワシントンで20日撮影(2017年 ロイター/Carlos Barria)

 米国のトランプ新大統領が20日の就任演説で明確に打ち出したのは、保護主義的な政策による「米国第一主義」だった。直後に環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を表明、日本政府関係者からは、自由貿易の促進を掲げる主要7カ国(G7)の結束が揺らぎかねないとの懸念が浮上している。当初、1月下旬をめどに模索していた日米首脳会談も2月以降に先送りされる方向で、日米関係の先行きは不透明感が増している。

 安倍晋三首相はトランプ大統領就任に当たって祝辞を贈り、日米同盟の意義をあらためて強調。早期の首脳会談を呼びかけるとともに「日米同盟の重要性を世界に向けて発信したい」と訴えた。

 両国政府は1月下旬にも首脳会談を開催する方向で調整を続けていた。しかし、複数の政府・与党関係者によると、2月以降に先送りされたもようだ。

 トランプ新大統領の演説は、通商政策の大転換を打ち出したのが特徴だ。第2次世界大戦後、米国が一貫して主導してきた自由貿易主義から「米国第一主義」の旗の下で、貿易や税制などあらゆる分野における米国民の利益優先を表明。「保護こそ偉大な繁栄と力強さを導く」と訴えた。

 また、演説の直後に、環太平洋連携協定(TPP)からの離脱と、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を宣言し、就任初日から選挙公約を実行した。

 一方、安倍首相は20日の施政方針演説で自由貿易の重要性を指摘し、TPPの早期発効を訴えたばかり。

 ある政府関係者は「これまでG7やG20で合意してきたものが崩れかねない。日本を含めた国際社会と米国の関係は、暗中模索が続きそうだ」と警戒感を示している。

 今後は、TPP路線から転換し、日米二国間の貿易協定を結ぶ方向で、米国側からの働きかけがあると予想されるが、そのことは安倍政権の通商政策の大転換を意味する。

 安倍首相は、トランプ政権の発足直後から、大きな政治的決断を迫られる可能性が出てきた。

 (梅川崇 編集:田巻一彦)

[東京 21日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:トランプ氏の自動車関税、支持基盤の労働者

ビジネス

2025年度以降も現在の基本ポートフォリオ継続、国

ビジネス

TSMC、台湾で事業拡大継続 新工場は7000人の

ビジネス

午後3時のドルは149円付近に下落、米関税警戒続く
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中