最新記事

世界経済

習近平、ダボス会議で主役 ――「鬼」のいぬ間に

2017年1月18日(水)13時33分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

ダボス会議に初参加、基調講演で「グローバル経済」を強調した中国の習近平国家主席 Ruben Sprich-REUTERS

 1月17日から始まったスイスにおけるダボス会議で、トランプ次期政権が保護貿易に向く中、習近平国家主席は「グローバル経済」を強調する基調講演をした。ウクライナ大統領とも会談しロシアを牽制するなど主役顔だ。

グローバル経済の主役顔の習近平国家主席

 習近平国家主席は、1月15日からスイス入りして、16日に首都ベルンでスイスのロイトハルト大統領と首脳会談を行い、貿易投資を拡大させ、金融や保険分野で協力を高めていきたいとした。その後、列車の中で長いテーブルを挟んで歓談を続けるなどしながら、ダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)の会場であるダボスに向かった。

 習主席がダボス会議に出席するのは初めてのことで、スイスは「アメリカを除いた世界最強の経済国家」の代表として、国を挙げての破格の厚遇で習主席を歓待した。

 17日には習主席がダボス会議で基調講演を行い、トランプ次期政権を念頭に、「反グローバル化」「保護主義」を批判した。

 そして「現在、世界で起きている多くの問題は、決して経済のグローバル化がもたらしたものではない」とした上で、「中国は一貫して開放的でウィン-ウィンの地域自由貿易を貫き、排他主義に反対し、人民元を操作して貿易競争力を高める考えなど毛頭なく、ましていわんや、通貨戦争をする気などはまったくない」と主張した。中国メディアが伝えた。

 今年のダボス会議は1月17日から20日まで開催される。最終日ギリギリまでオバマ政権時代の範囲内に入っている。したがってアメリカからはオバマ政権のバイデン副大統領とケリー国務長官が出席する。

 本来なら1月下旬に開催されるはずだったが、あえて前倒ししたのは、トランプ政権に入る前に習主席が参加して、グローバル経済の旗手としての役割を果たしかったからではないだろうか。

 一部には、中国の春節(今年は1月28日)を避けるため、スイス側の厚意から前倒ししたのではないかと言われているが、筆者はそうは思わない。

 グローバル経済を牽引したオバマ政権が終わり、「アメリカ・ファースト」を掲げて保護主義に向かうトランプ政権が誕生する前の、こんな「奇跡的な間隙」を縫って開催するなど、いかにも中国が考えそうなことだ。

 この「鬼のいぬ間に」、アメリカに代わって中国こそが世界のグローバル経済を牽引していくのだというメッセージを、世界にアピールするための戦略であったと、筆者は見る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

TSMC、欧州初の工場を年内着工 独ドレスデンで

ビジネス

ステランティス、中国新興の低価格EVを欧州9カ国で

ビジネス

午前の日経平均は続伸、米株高で 買い一巡後は小動き

ワールド

ブラジルのサービス業活動、3月は拡大に転換 予想も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中