最新記事

ナイジェリアを「金で買った」中国――「一つの中国」原則のため

2017年1月16日(月)11時46分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

中国の王毅外相 Greg Baker-REUTERS

 中国は11日、ナイジェリアに対する400億ドルの新規投資と引き換えに、台湾との関係を格下げし北京が主張する「一つの中国」原則を遵守することを約束させた。今後もこの外交戦を強化する。トランプ発言に対抗するためだ。

台湾のナイジェリア代表処の改称と移転

 中国の王毅外相は1月11日、訪問先のナイジェリアでオンエアマ同国外相と会談し、「台湾は中国の領土の一部であり、中国を代表する合法的政府は、唯一、中華人民共和国のみである」という「一つの中国」原則を堅持することを約束させた。会談後の共同声明に署名したと、中国政府および中国共産党のメディアが一斉に伝えた。その中には中国政府の通信社「新華網」や中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球網」あるいは中央テレビ局CCTVがあり、特にCCTVは「メディアの焦点」という特別番組でこの問題を特集した。

 ナイジェリアは「中華民国」と国交を結んでいるわけではないが、しかし首都アブジャに台湾との交流窓口として「中華民国商務代表団」を置いていた。中華人民共和国(北京政府)とも国交を結んでいながら、台湾との窓口組織名に「中華民国」という名称を使っている国は少ない。CCTVの報道によれば「アフリカでは唯一の国だ」とのこと。

 このたび両国は台湾との交流窓口を首都アブジャからラゴスに移し、かつ窓口の名称から「中華民国」という言葉を削除することに合意した。

 王毅外相は両国関係を新たな段階に引き上げるために、「一つの中国」原則を基礎に置きながら「ナイジェリアの鉄道、高速道路、水力発電および軍事安全」など、巨大なポテンシャルを持つ領域における協力を約束した。

その陰には400億ドル(約4.5兆円)の新たなチャイナ・マネー

 1月14日、中国大陸のウェブサイトの一つである「観察者網」は「大陸はナイジェリアに400億ドルを新たに投資 台湾驚愕」というタイトルの報道をした。

 それによれば中国政府はナイジェリアに、新たに400億ドル(約4.5兆円)の投資をすることを決定したとのこと。中国はすでにナイジェリアに450億ドル(5兆円強)を投資している。

 王毅外相は共同記者会見で「中国はすでにナイジェリアに220億ドルの投資を実施し終わっており、残りの230億ドルに関しては現在当該プロジェクトを実施中だ。このたびさらに、新たに400億ドルの投資を追加したということだ」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

脅迫で判事を警察保護下に、ルペン氏有罪裁判 大統領

ビジネス

貿易分断で世界成長抑制とインフレ高進の恐れ=シュナ

ビジネス

テスラの中国生産車、3月販売は前年比11.5%減 

ビジネス

訂正(発表者側の申し出)-ユニクロ、3月国内既存店
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中