最新記事

米軍事

ツイートするのは簡単でも実現は困難な核軍拡

2016年12月29日(木)12時00分
ジェフリー・ルイス(ミドルベリー国際大学院東アジア不拡散プログラム・ディレクター)

 筆者は同僚の研究者と共に公式発表に基づいて核の3本柱のアップグレード費用を試算してみた。結果はおよそ1兆ドル。軍高官は核の3本柱の更新を目の前に立ちはだかる「高山」に例える。この場合、登頂を阻む最大の障壁はコストだ。

 トランプは核兵器の更新を老朽化したホテルの改築やカジノ建設と同列に考えているようだ。だが、核の更新は想像を絶するほど複雑で、数十年にわたり複数の開発事業に同時に目配りしてスケジュールとコストを管理しなければならない。3本柱の入れ替えが同時に滞りなく進まなければ、アメリカの核戦略にほころびが出る危険性がある。

【参考記事】中国空母が太平洋に──トランプ大統領の誕生と中国海軍の行動の活発化

 実際、オバマ政権のスタッフは更新計画の費用をどう捻出するかまったく知恵が浮かばず、自分たちの代にやらずに済んでホッとしているという。

 登山なら、天候が荒れ模様で登頂が困難な場合、有能な登山隊長は下山の判断を下す。

 筆者は半年前のコラムに「オバマ政権は請求を免れても、誰かが支払うことになる」と書いた。そのときはヒラリー・クリントンが登山隊を率いることになると考えていた。

 だが予想は外れた。無謀な登山隊長トランプは、何が何でも頂上を目指す構えだ。

From Foreign Policy Magazine

[2017年1月10日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、英仏と部隊派遣協議 「1カ月以内に

ワールド

トランプ氏の相互関税、一部発動 全輸入品に一律10

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、2週連続減少=ベーカー

ワールド

台湾の安全保障トップが訪米、トランプ政権と会談のた
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中