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難民問題イスラム嫌いのスロバキアとEUの深い亀裂
今年9月、スロバキアのフィツォ首相(左)とドイツのメルケル首相 Yves Herman-REUTERS
<オーストリアに極右大統領が生まれずとも、EUは既にリベラルな先進国と排外主義の中進国に分断している>
週末の大統領選で、オーストリアの極右候補は大統領になり損ねたが、EUの辺縁諸国は極右ならずとも排外主義に傾いている。旧東欧のスロバキアはこの1年、イスラム教徒がこの国でいかにお呼びでないかを繰り返し示してきた。
3月の議会選挙では、極右のポピュリスト政党が躍進した。ネオナチ政党も初めて議席を獲得。中道左派政権を率いるロベルト・フィツォ首相でさえ、イスラム教徒の脅威を訴えてきた。5月のインタビューではこう言った。「我が国にイスラム教徒の居場所はいない。問題は移民の流入ではなく、彼らがスロバキアの顔を変えてしまうことだ」
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7月、スロバキアは輪番制で欧州評議会の議長国になる。欧州諸国が難民危機に直面し、EU加盟国に難民割当制を受け入れてもらおうとしているタイミングで、これ以上は1人も難民を入れたくないと言っているスロバキアが議長国になったのだ。リベラルな欧州諸国にとっては迷惑なことだった。
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事実先月になると、スロバキアはEUに対し、各国がお金を出し合ってEUとそれ以外の地域の間の国境管理を強化するか、難民を強制送還するという計画を提出した。難民を受け入れる代わりに、入れないか追い出すことに力を注ごうというのだ。
宗教として認めない
そして今、スロバキア政府は、国としてイスラム教を宗教として認めることを事実上妨げる法律を成立させた。新しい法律では、宗教が国の補助金を受けるためには、信者が5万人以上いなければならい。
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以前からイスラム教徒の入国を抑制してきたスロバキアには、イスラム教徒は現在約2000人しかいない。「将来、この国にモスクが1つも建たないようにするため、あらゆる手を打つ」というスロバキア国民党が提出した法案だ。
スロバキア(と、中央ヨーロッパのヴィシェグラード4カ国をともに構成するチェコ、ポーランド、ハンガリー)の内政に大きな変化は期待できないだろう。だがヨーロッパは変わるかもしれない。来年1月には、マルタが欧州評議会の議長国になるからだ。マルタは、ヨーロッパ中に難民や移民を定住させる「強制再定住計画」を支持している。もちろん、その時にはスロバキアも対象になる。この溝を、EUはどう埋めるのだろうか