最新記事

和平

【写真特集】ノーベル平和賞「52年間内戦」コロンビアの今

2016年12月10日(土)07時05分
Photographs by Mads Nissen

 ノーベル賞という国際社会の"アシスト"が奏功したのかもしれない。国民投票での否決後、政府はFARCと修正協議を重ね、11月半ばに新たな和平合意案を作成、11月末に上下両院で可決・承認した(そもそも承認に国民投票は必要なかった)。反対派は今も存在し、合意をどう履行していくかが問われるが、これでともかく内戦は終結した。FARCは今後、ゲリラたちの武装解除と社会復帰を進め、合法的に政治参加していくことになる。

 サントスの受賞発表時、シリア内戦下のボランティア団体「ホワイト・ヘルメット」など、他にもっと授与すべき対象がいたのではないかといった声が上がった。その是非についてここでは述べないが、ノーベル平和賞は元来、過去の功績よりも、平和遂行という将来への期待を込めて授与される傾向がある。

【参考記事】「ホワイト・ヘルメット」を無視するノーベル平和賞の大罪

 その意味では、サントスの受賞は"成功"だったかもしれない。一度は頓挫しかけた和平合意を後押しする役目を果たしたのだから。

ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

tkyphoto161210-5.jpg

コロンビアの首都ボゴタのボリバル広場にて。国民投票での和平合意否決後、合意支持を訴える活動家たちが等身大に切ったボール紙の人形を立て、内戦の犠牲者を悼む

tkyphoto161210-6.jpg

コロンビアの首都ボゴタのボリバル広場にて。和平合意への支持を訴えてデモをする活動家たち。若者を中心に数千人が参加した

tkyphoto161210-7.jpg

地雷除去作業を行うパラ。コロンビアは世界有数の地雷が多い国だが、かつて地雷を埋めていたFARCのゲリラたちが、今は政府の地雷除去に協力している

tkyphoto161210-8.jpg

内戦被害の大きい山岳地帯のプエブロ・ヌエボ村近くで、ガソリンをコカの葉に加える作業員。コカインを生産するコカ農園で働くと、コーヒー農園の倍の収入が得られるという

tkyphoto161210-9.jpg

学校を終え、プエブロ・ヌエボ村の家に戻るアレクサンドラ・マソ(12)。この山岳地帯は現在FARCの支配下にある

tkyphoto161210-10.jpg

ブエナベンチュラのスラム街プエンテ・ナエロには1200家族以上が暮らすが、推定95%は内戦により住む家を追われた人々だ

tkyphoto161210-11.jpg

夫アルバロ・ステベン(20)の葬儀で悲しみにくれる妻ナスリ・マルティネス(19)。アルバロは至近距離から銃殺された。1950年代から現在に至るまで、コロンビアには暴力がはびこってきた

tkyphoto161210-12.jpg

娘から贈られたイエス・キリストのネックレスを首にかける漁師、ディマス・バヌエラ(62)

撮影:マッズ・ニッセン
1979年生まれ。デンマーク在住。2015年にはロシアのゲイカップルの写真で世界報道写真賞(現代社会の問題の部、単写真1位)を受賞。今回、ノーベル平和センターの依頼により、サントス大統領の平和賞受賞発表後、コロンビアで数週間にわたり大統領とコロンビアの人々を撮影。内戦と暴力に疲れ果てながらも、平和を願い、一歩一歩前進を続けるコロンビア人のイメージを切り取った。

※ノーベル平和賞展示会「HOPE OVER FEAR」は、オスロのノーベル平和センターで12月12日から2017年11月26日まで開催。

Photographs by Mads Nissen for Nobel Peace Center/Panos

≪「Picture Power」の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB総裁、欧州経済統合「緊急性高まる」 早期行動

ビジネス

英小売売上高、10月は前月比-0.7% 予算案発表

ワールド

中国、日本人の短期ビザ免除を再開 林官房長官「交流

ビジネス

独GDP改定値、第3四半期は前期比+0.1% 速報
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中