影響力を身につけるには有名人に「便乗」すればいい
スリルを駆使する
当然ながら、オーディエンスには大きな価値を提供したい。そう願うあまり、人は時に「質」と「量」を混同する。プレゼンの際、疑問点がないようにと詳細や補足を盛り込んだり、必要かどうかを考えずに顧客にアラートメールを山ほど送ったり......。
ディケンズに学ぼう。ヴィクトリア時代を代表する作家である彼は、作品をまとめて読ませなかった。彼の小説は連載や分冊の形で発表された――月に1度、あるいは週に1度、小分けにして。この形式は、期待を高めるうえで絶大な効果があった。読者はわくわくして次の回を待ち、最新エピソードの発表は一大イベントになった。
教訓――オーディエンスが欲しいなら、隠せ。1時間半かけて一度に話すのでなく、40分ずつ3回に分けて話そう。答えをすべて教えず、相手に自分で考えさせよう。謎によって興味をかき立てよう(このパラグラフにもある意図的な誤りを隠しておいたが、気づいただろうか?)。私が最も影響力を感じる話し手の一部は、自然なやり方で謎をかけられる。だからこそ彼らは、よくあるアドバイスどおりに「これから何を話すかを話し、それを話し、何を話したかを話す」人より聴衆の心を動かす。
オーディエンスに謎を出そう。最初に難問を提示し、最後まで聞けば答えがわかると約束しよう。いや、もっといいのは話の最後に問いかけをすること。そして次の回で答えを教えると約束することだ。影響力は時に、内容の濃度ではなく隙間に宿る。
スリップストリームとピギーバック
商業用不動産の専門家なら、ショッピングモールの集客を左右するものはたったひとつだと知っている。魅力的な「中核テナント」の確保だ。こうしたテナントとはたいてい、大勢の客を呼び込める有名デパート。デパートで買い物をした人が、帰りがけにシューズショップや食料品店、高級オーディオ専門店に立ち寄り、そこにもカネを落としていく仕組みだ。
この戦略は、モータースポーツなどで使われる「スリップストリーム」と似ている。前を行くマシンが巻き起こす空気流を利用して、相手を抜き去るテクニックだ。オーディエンス獲得を目指すときもこの戦略が使える。自分より有名な誰かを呼び込めれば、その人気に便乗(ピギーバック)することができる。彼ら目当てのオーディエンスの一部を、自分のファンに変えることも。
影響力がある人が、あなたの名前を売ることに協力してくれるだろうか。「奉仕の精神」を持つ寛大な人物なら、あなたのプロジェクトに価値を感じるなら、それともプライドをくすぐられたなら、ありうる。「有力者の秘訣」をテーマにしたポッドキャストに出演してくださいと頼まれたら、なかなか断れないものだ。
ブロガーのブラッドは、有名ブロガーにインタビューする手法で人気を集めた。「簡単な話だった。何人かの有名人に話を聞いただけだ。ほとんどの相手は進んでファン開拓法を教えてくれたし、それを紹介することで彼らのファンの一部、一部といってもかなりの数を自分のファンにした。コツは相手の時間を無駄にしないこと、プロフェッショナルな態度で接すること、断られたときはしつこくしないことだ」
【参考記事】レジリエンス(逆境力)は半世紀以上前から注目されてきた
※シリーズ第3回:自分の代わりに自分を宣伝してくれる人を育てよ
『ここぞというとき人を動かす自分を手に入れる
影響力の秘密50』
スティーブン・ピアス 著
服部真琴 訳
CCCメディアハウス